中学受験ノウハウ 連載 今一度立ち止まって中学受験を考える

学年別 絶対にムダにしない夏休みの過ごし方|今一度立ち止まって中学受験を考える

専門家・プロ
2023年7月13日 石渡真由美

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もうすぐ夏休みがやって来ます。

半年後に入試を控えている6年生にとっては大きな正念場。受験勉強に集中し、本番に向けた実力を養う大切な期間です。

4・5年生も、苦手克服に十分な時間を取ることができる絶好のチャンス。

この貴重な休みをムダにしないためには、事前に作戦を練ることがポイントです。

受験生にとっての夏休みの位置づけとは

小学生には春休み、夏休み、冬休みの3つの長期休みがあります。

日頃、学校と塾を両立させながら受験勉強をしている子どもたちにとって、学校のない長期休みは受験勉強だけに集中できる貴重な期間。しかし、春休みは学年が変わる前の準備でバタバタしたり、冬休みは間にお正月を挟んだりと意外とせわしなく、期間もそれほど長くないため、腰を据えて勉強に取り組むのはなかなか難しいものです。

その点、夏休みは年度の半ばであり、しかも40日間もあります。一年の中で、これほどたっぷり受験勉強のための時間が取れる期間はなく、ムダに過ごしてしまうのは非常にもったいない!

ほとんどの塾では、夏休み期間はカリキュラムをストップして、1学期までに習ったことの復習を行います。夏休みの学習で抑えておきたいのは、「苦手単元の克服」「(途中入塾の場合は)未修単元の確認」の2点です。

まずは、各学年において、夏休みはどんな位置づけであるかを親子で確認しておきましょう。

【4年生】家族旅行は勉強と思わせないことがポイント

4年生にとっては、本番はまだまだ先のこと。今から根詰めて勉強をしていると、途中で息切れをして走りきれなくなってしまいます。

小3の2月に受験勉強が本格スタートして約半年。苦手分野ができてしまったのなら、そこは克服する必要がありますが、それさえ抑えておけば、あとは遊んでOKです!

学年が上がっていくにつれて学習内容が難しくなり、塾の授業時間も長くなるなど物理的に拘束されていきますので、今のうちに家族旅行をしておくことをおすすめします。

その際、できれば海外ではなく、国内の中学受験に関連しそうな場所に連れて行ってあげるといいでしょう。私のイチ押しは奈良です。

奈良は社会入試の歴史分野で必ず登場するエリア。東大寺の大仏、興福寺の阿修羅像、春日大社、唐招提寺、薬師寺、高松塚古墳などなど、見どころがいっぱいです。ですが、街全体がこじんまりとしているので、レンタサイクルを使えば、1日でいろいろなところを回ることができます。

特におすすめは興福寺の阿修羅像。子どもにとって阿修羅像のインパクトは相当のもので、一度見たら忘れることはありません。また、阿修羅像は中学入試の鉄板問題といってもいいほどよく登場します。子ども達は写真を見ただけで、「あっ、これは興福寺の阿修羅像だ! ということはこの問題は奈良時代のことを聞いているんだな」と即座に判断することができます。

お子さんを旅行に連れて行くときは、「このエリアは中学受験に出るから」と、勉強に役立つことを前面に出さない方がいいでしょう。“勉強のため”と思うと、途端にテンションが下がり、つまらなくなってしまうからです。

単に家族旅行で行ってみたというスタンスでOK。連れて行くだけでも十分効果があります。そこで何を感じるかは子ども次第ですが、実際に自分の目で見ておくと、のちの授業で先生から教わったときに、記憶の残り方が違ってきます。

このように自分の体験を伴ったものは、印象に残りやすいのです。また、そのときの体験から、歴史に興味を持つようになることもあります。

【5年生】未修分野は要チェック 転塾を検討中なら決断を 

5年生も夏の旅行をおすすめします。ただ、5年生になると、塾の勉強がかなり難しくなってきます。この時期に苦手分野がたくさんあると、後々まで苦労することになりますので、5年生の夏は苦手分野の克服に重点をおくようにしましょう。

また、4年生から塾に通い始めたものの、成績が一向に上がらない、塾との相性がいまいちしっくり来ないという場合は、たとえば夏休みだけ別の塾に通ってみるというのもアリかもしれません。

夏期講習は多くの塾で「1学期の復習」をおこないます。新しいカリキュラムに進まないので、丸々お休みしてしまっても学習を進める上ではそれほど大きな影響はありません。学校がないので自宅で足りない部分を補うこともできます。

【6年生】苦手分野を盤石にして、少しずつ過去問にも挑戦

6年生になると、受験勉強一色になります。塾の勉強に加え、家庭学習も大事ですから、一日10時間くらいは勉強することになります。

この時期になったら、家族旅行はしばらく我慢していただくのがよいでしょう。保護者の休みがここしかないからと、夏期講習の最中に旅行に連れていってしまうご家庭が稀にいますが、子どもにとっては迷惑な話。内心は「塾の勉強に遅れてしまうから、行きたくない」と思っているかもしれません。厳しい言い方となりますが、親の都合で子どもの勉強の邪魔をしないよう、親御さん自身も“受験親”としての自覚を持っていただきたいと思います。

6年生の夏の学習は、とにかく苦手単元を克服することです。ある程度、仕上がってきている子は、少しずつ過去問に挑戦してみてもいいかもしれませんが、過去問対策は秋以降に本格的に取り組むことになりますので、焦る必要はありません。苦手単元を少しでもなくしていくことに注力しましょう。

その際、ただ闇雲に勉強しても効果は望めません。始まる前は40日間もあると思っていた夏休みも、気がつくとあっという間に過ぎていきます。まだまだ時間があると思って、一つの単元ばかり勉強していたら、他の苦手単元まで手が回らなくなってしまった……なんてことにならないように、作戦を練って進めていきましょう。

そのためにはきちんと計画表を作っておくことが大切です。計画表は親が一方的に作成したものを子に押し付けるのではなく、親子で一緒に話し合いながら作ってみましょう。

ただし、子どもの自主性を伸ばすためにと、なんでも子どもに任せてしまう親御さんもいますが、子どもだけにやらせるのはおすすめしません。夏休みを有意義なものにするには、大人のアドバイスも必要です。

計画表は勉強をガッツリ頑張る日と、少しお休みモードの日の2種類作っておくといいでしょう。例えば講習のある日は塾の勉強はもちろん、その日に学習したことはその日のうちにしっかり復習をするなどガッツリ頑張る日にしておき、講習のない日は午前と夕方に勉強時間を設け、昼間は休むなど、メリハリをつけておくといいと思います。

また、計画は立ててみたものの、予定通りに行かない日も出てくるでしょう。そんなときは、「あなたがやるって言ったのに」と子どもを責めるのではなく、「ちょっと予定を詰め込み過ぎちゃったかもね。じゃあ、どこをカットすればいいかな?」と引き算思考でベストを探って「予備日」を設けておくと調整しやすいです。

まとめ

受験生の6年生にとって、夏休みは長丁場です。でも、毎日は思っている以上に早く過ぎていきます。この夏の頑張りが、秋以降の成績につながるように、今から心の準備を始めておきましょう。

※記事の内容は執筆時点のものです

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宮本毅

宮本毅

  • 専門家・プロ

1969年東京生まれ。武蔵中学・高等学校、一橋大学社会学部社会問題政策過程卒業。大学卒業後、テレビ番組制作会社を経て、首都圏の大手進学塾に転職。小学部および中学部で最上位クラスを担当し、多数のトップ中学・高校に卒業生を送り込む。2006年に独立し、東京・吉祥寺に中学受験専門の「アテナ進学ゼミ」を設立。科目間にある垣根は取り払うべきという信念のもと、たった一人で算数・国語・理科・社会の全科目を指導している。また「すべての子どもたちに自発学習を!」をテーマに、月一回の公開講座を開催し、過去3年間でのべ2000名近くを動員する。若い頃からの変わらぬ熱血指導で、生徒たちの「知的好奇心」を引き出す授業が持ち味。YouTubeチャンネル「アテナチャンネル」を運営。

■著書

『はじめての中学受験 これだけは知っておきたい12の常識』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)『中学受験 同音異義語・対義語・類義語300』(中経出版)『文章題最強解法メソッド まるいち算』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)『中学受験 ゴロ合わせで覚える理科85』(KADOKAWA出版)『中学受験 ゴロ合わせで覚える社会140』(KADOKAWA出版)『ケアレスミスをなくせば中学受験の9割は成功する』(KADOKAWA出版)『合格する子がやっている 忘れない暗記術』(かんき出版)

石渡真由美

  • この記事の著者

フリーライター。子供の誕生をきっかけに、わが子の成長に合わせ、ベビー雑誌、育児・教育雑誌、塾専門誌で取材執筆。6年前に子供の中学受験を経験したものの、国立大学の附属中学で併設高校が無かったため、その3年後に“高校受験生の母”、またその3年後に“大学受験生の母”も体験。中・高・大の3つの受験を知る受験ライター。