国語の入試で親に見てほしい〝学校のクセ〟とその対策│ 中学受験塾のトリセツ#24
中学入試と一口にいっても、学校によって問題の傾向はさまざまです。
塾によっては経験として子どもに有名校の過去問を触れさせることもありますが、家庭では志望校や併願校の過去問にしか触れる時間はないかもしれません。
学校ごとの入試傾向の違いを、よくご存じない保護者も多いでしょう。
この記事では〝学校のクセ〟ともいえる、国語の入試問題の特徴と対策を5つ紹介します。
志望校に当てはまるものがあったら、ぜひ注目して対策してみてくださいね。
また、志望校に当てはまらない場合でも、国語の入試問題にはこんなタイプがあるのだという参考にはなると思います。
ご自身の志望校分析の材料になればと思います。
1.読解問題の文章量が多い
「読解問題の文章量が多い」入試は、浦和明の星女子中学校などに見られる特徴です。
試験時間50分に対し、大問2つで1万字程度の文章を読みます。
1万字というのは、文庫本で言うと15ページほどの長さです。
塾の国語のテストの文字数と比べても圧倒的に多く、それだけで集中力が試されますよね。
読解が得意でない子は文字量から受ける圧力で委縮してしまうかも。
最後までノンストップで読み切れるかどうかが、最初のハードルといえます。
対策
読解の文章量が多い学校は、まず最後まで読み切る集中力を鍛える必要があります。
集中力は普段から少しずつ備わってくるものですが、集中力を切らしてしまう原因を省くのも一つの手です。
たとえば語彙量。わからない言葉が続くと集中力が途切れて、文章が追えなくなってしまいます。
どんなに好きなジャンルの話でも、初めて聞く専門用語が多すぎたら読み進められないですよね。それと同じです。
読解中にわからない言葉を見つけたら印をつけ、採点や見直し後にさっと調べて語彙量を増やすと良いでしょう。
地味な作業ですが、調べれば簡単な言葉だったということは多くあります。
「わからない→わかる」の積み重ねで「わからない言葉があってもなんとなくつなげて読み進める」ことができるようにもなりますよ。
2.記述問題が多い
「記述問題が多い」入試は、開成中学校や桜蔭中学校などに見られる特徴です。
問題数も文章量も多いので、模範解答を見るとその特徴はすぐにわかります。
ベーシックな入試問題だと、記述問題は20~40字で3問前後です。
一方で開成中学校では50字以上のものも含めて7問を超えます。
さらに桜蔭中学校では、総記述文字数が1000字近くになることも。
対策をしないと、手も足も出なくなってしまう入試といえますね。
対策
記述問題が多い入試では、すべての問題で得点を取ることが重要です。
もちろん満点を取るのが理想ですが、せめて部分点は必ず取るようにしたいですね。
そのためには、「記述の練習では空欄を作らない」と決めておくことが効果的です。
また、こういった入試問題を出す学校は偏差値が高い場合が多く、出題される文章の読み取り自体も難しいものが多い傾向にあります。
文章のいいたいことや流れを理解する力もあわせて鍛えたいですね。
授業や家庭学習では、読解の最後の問題を理解することに重点を置くのも良いでしょう。
最後の問題は、主人公の変化や筆者の主張など要約に近い問題になっていることが多いためです。
この問題をしっかり理解することで文章全体の流れが頭に入り、より広い視野で文章を読むことができるようになります。
3.漢字や語彙の設問が多い
「漢字や語彙の設問が多い」入試は、慶應義塾中等部などに見られる特徴です。
漢字はほとんどの学校で出題されますが、10問以上出すところはそう多くありません。
読解の設問として1問あるのではなく、大問として漢字が出る学校はそれらの配点が高くなります。
加えて語彙や文法問題が数問出題されるなら、学校自体が知識を重視しているといえるでしょう。
文学史、敬語など、年ごとに知識問題がまとまって出るところもあるので、必要に応じて追加で勉強する時間を取りたいですね。
対策
普段から、漢字と語彙をしっかり勉強しておくことが重要です。
漢字や語彙は読解の基礎にもなるので、毎日決まった量を解いて積み重ねます。
読解をメインにする国語の勉強とは別で、朝や寝る前の隙間時間に、勉強というより脳のストレッチのような感覚でやっていくと負担は少ないかもしれません。
漢字を多く出題する学校は、特別難解な熟語ではなく、基本的な漢字問題が多く出題される傾向にあります。
まれに小学校で習わない漢字の出題もありますが、ほとんどが小学校で習う漢字です。
点数を取るというより、点数を落とさないという意識で臨みたいものです。
また、板書を写すときや記述問題で文章を書くときなどでも漢字を使うクセをつけておくのも大切ですね。
4.選択肢が5択
「選択肢が5択」の入試は豊島岡女子学園などに見られる特徴です。
一般に授業や模試などでは4択が多いです。多くの学校でも4択で出題されていますしね。
目や手が4択に慣れてしまうと、5択には戸惑ってしまいます。
また、選択肢がアイウエではなくイロハニの学校もあり、こちらも慣れるまでは誤答が頻発します。
対策
選択肢の見た目が違う場合は、とにかく志望校の形式に慣れることが重要です。
5択であることを意識するために、まず初めて見たときに「この学校は5択だから気をつけよう」と言葉にすると良いでしょう。
言葉にして意識することは意外と重要です。
また、4択から5択になるということはややこしい選択肢が増えることでもあります。
消去法でまず2~3択に絞り、そこから精査するという基本ステップは確実にこなしましょう。
それでも慣れない場合は、慣れるまで数をこなします。
過去問を多く用意できるなら、シミュレーションではなく慣れのためとして、1回分の過去問を大問ごとに数日に分けて解くというのもアリですね。
5.自由作文がある
「自由作文がある」入試は頌栄女子学院中学や公立中高一貫校などに見られる特徴です。
自然や社会、言葉についてなどテーマは幅広く、知識と思考力が求められます。
作文自体は学校でも書く機会があるでしょうが、入試の限られた時間に書くのは感覚が違います。
自由作文は何を書くか、どうまとめるかなど考えることが多いもの。
慣れていないと手も足も出ないので、しっかり対策したいですね。
対策
自由記述は練習あるのみです。
限られた時間で必要な内容と量を書くのは、慣れが必要です。
自由作文ではどれだけ美しい文を書くかよりも、制限時間内にテーマに沿った文章を書ききることが重要。
自由作文のある過去問を解くときは、時間内に書ききれなくても、練習として最後まで書ききるようにしてみてください。
記述テーマは、読解テーマに関連したものも多いです。
たとえば本文のテーマが最近の日本語だったら、「ら抜き言葉についてどう思うか」「あなたが気になる言葉づかい」といったテーマが出題されるなどです。
志望校の読解でよく出るテーマがあるなら、作文でなくても会話で自分の意見を言う練習から始めてみるのも良いと思います。
学校のクセを押さえて対策を
それぞれ学校の個性が出る中学入試。
学校のクセを押さえて対策をすると、志望校へ向かっているという実感も得られるでしょう。
一度、親も過去問をはじめから終わりまでじっくり眺めてみると、気づくことがあるかもしれません。
子どもに模試などとの違いを聞いてみるのも良いですね。
親御さんが子どもと一緒に志望校の問題を分析できると、たとえ過去問演習の点数が低くても冷静に対策を考えられます。
漢字・語彙・読解といった国語の基本を積み上げつつ、学校ごとのクセも押さえて、ぜひ志望校合格を勝ち取ってください!
また、塾講師は多くの学校の過去問に触れ、今回ご紹介したような出題傾向の分析や対策を日々練っています。過去問対策に悩んだら、ぜひ通っておいでの塾の知見を頼りにすることも検討してみてくださいね。
※記事の内容は執筆時点のものです
とじる
お気に入り機能は
会員の方のみご利用できます
会員登録のうえログインすると
お気に入り保存できるようになります。
お気に入りのコンテンツは、
マイページから確認できます