中学受験ノウハウ 連載 塾のトリセツ

共働きでも中学受験はできますか? │ 中学受験塾のトリセツ#29

2024年1月09日 天海ハルカ

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中学受験を考えて塾へ通わせようと思ったけど、送迎やら塾弁やら大変そう……。

祖父母のサポートが期待できない環境なので、子どもにかけられる時間が少ない……。

「共働きで中学受験はハードルが高い」と思われがちですが、そんなことはありません!

難関校を目指すご家庭でも共働きというところは少なくないのです。

子どもの性格にもよりますが、工夫と心構え次第で中学受験も通塾もできます。

今回は共働きでもできる中学受験、そして通塾のポイントについてお話しします。

共働きの中学受験、大変なのは時間の捻出

共働き家庭が中学受験を目指すにあたり、もっとも頭を悩ませるのは「時間」でしょう。

通塾ひとつとっても、やることはたくさんあります。

送迎は時間が決まっているため、親御さんの職種によっては物理的に不可能な場合もあるでしょう。

勉強面でも、子どもによって必要な学習時間やサポート内容が異なります。

学習計画の管理は代表的な伴走のひとつですが、簡単にスケジュールを作るだけであとは自分でできるという子もいれば、勉強を始めるのにも親の手が必要という子もいます。

ちなみに我が家の娘は後者で、共働きだとマネジメントが難しいタイプ。低学年の頃は自分でやりたがっていたのに、いつからか「勉強中は隣で見ていてほしい」と言うようになりました。

小学生は成長の真っただ中にいるので、同じ子どもでも対応が変わる可能性もあり難しいですよね。

もしも祖父母が同居、もしくは近くに住んでいてサポートがもらえるなら、共働きでもだいぶ楽にはなるでしょう。

出費はかさみますが、手のかかる部分をアウトソーシングするという方法もあります。個別指導塾や家庭教師の活用するケースは多いですね。

中学受験、共働きだからこその苦労は確かに多いです。でも、働いていて子どもや家庭につきっきりにならない分、保護者の精神的な逃げ場が作りやすいのはメリットでもあるんですよ。

共働き前提での塾選びのポイント

共働きで中学受験をするなら、塾選びの段階で気をつけたいポイントがいくつかあります。

送迎や勉強などで家庭の負担が極力少ない塾を選べば、通塾はぐっと楽になりますよ。

場所は近くて行きやすいか

共働きの場合、できるだけ近い塾を選びたいですね。

というのも共働きだと、子どもが学校から帰宅して一人で準備し塾へ向かうことが考えられるからです。

高学年は学校からの帰宅が遅くなります。軽食をとってから電車に乗ると、授業開始ギリギリということも少なくありません。

あせって塾へ向かった結果、ノートや宿題を忘れてしまっていた……という事態は避けたいですよね。

ただし、距離だけがすべてというわけではありません。

共働きの保護者が送迎することを考えれば、単純な家からの距離よりも、送迎のしやすさが鍵になることも多いでしょう。

迎えに行く時間を保護者の帰宅時間に合わせられるなら、塾が自宅と職場の間にあったり、職場と同じ沿線にあったりすると楽ですね。

実際に平日は、仕事帰りにスーツで迎えに来ている親御さんもよく見られます。

駅に近い塾だと車での送迎はしづらいことも多いので、車で送迎するなら塾選びの際、周辺に停めるところがあるかも確認したいですね。

学年が上がると、帰りも塾までではなく最寄り駅までのお迎えだけで済ませる家庭が増えます。

体感ですが、私が勤めていた塾では、6年生で塾まで迎えにくるのは2~3割

4年生でも半数近くは最寄り駅までのお迎えで、塾から駅までは子どもだけで帰っていました。

塾によっては講師が駅まで送ったり途中に立っていたりするところもあるので、塾選びの際は、帰宅時の安全についても調べてみると良さそうです。

塾まで1人で行ける、帰りは最寄り駅までは1人でも安心という塾を選ぶと、送迎の手間や心配が減らせますね。

塾の送迎については次の記事も参考にどうぞ。

自習や質問に対応しているか

家庭での勉強を重視する塾と、家庭学習を含めて多くを任せられる塾があります。

共働きだと家で勉強を見る時間の確保が難しいため、授業以外の勉強サポートを受けやすい塾には大きなメリットがあります。

自習室や自習をサポートするシステムがある塾だと、家で勉強を見る時間が少なくても安心です。

ただ、その内容は塾によってさまざまなので、自習室は何時から何時まで使えるか、どのくらいの生徒が使っているか、質問には対応しているかなどはあらかじめ聞いておくと良いですね。

塾弁を用意する手間は気にしなくてOK

中学受験塾というと塾弁を気にする人も多いですが、私としてはあまり気にしなくて大丈夫と考えています。

塾弁といっても軽食なので、キャラ弁のように手間のかかるものを持たせる必要はありません。

さっと食べてさっと勉強に向かえるよう、コンビニのおにぎりや冷凍食品を詰め合わせるなど簡単なもので十分です。

もし、塾弁は不要とうたう塾限定で探したとしても、多くの場合、塾へ行く前に食べる用の軽食は用意しておくことになるんですよね。

結局、塾弁を用意する手間と大して変わらないので、塾弁を気にして塾を選ぶ必要はさほどないのではと考えています。

共働き家庭における通塾のポイント

次は、実際に塾に通い始めてからのポイントです。

共働きでの通塾は大変ですが、工夫次第で緩和できます。

ポイントは、とにかくさまざまな作業を効率化すること。使えるものはどんどん使って、時間を有効活用しましょう。

夫婦で役割分担をする

働きながら一人で送迎や勉強の管理などをするのはさすがに大変。

夫婦で時間が合うほうが送迎に行ったり、勉強の管理係とメンタルケア係に分かれたりするなど、タスクや役割を分担して、夫婦で協力できると良いですね。

もちろん兄弟や祖父母など、巻きこめる家族はどんどん巻きこみましょう。

母親が迎えに行く間にお兄ちゃんが夕食を温めお皿に盛りつけておくなど、家事を手伝ってもらうことで、間接的に巻きこむという方法もあります。

勉強を見るといっても、授業外でも質問できる塾なら勉強を教える係は基本的に不要です。

家ではスケジュールの管理や問題の採点、教材の整理、メンタルケアが主な仕事になると思います。

穏やかな気持ちで子どもと向き合うために、一人で抱え込まず役割分担することは大切ですよ。

スケジュールをやりくりする

仕事がある日はそれだけで疲れてしまうので、仕事がある日とない日でやることを分けるとスムーズです。

親の仕事がない日は、1週間分のスケジュールの確認やプリント・冊子の整理など、時間のかかるものに手をつけます。

仕事があって忙しい日は勉強内容のチェックや採点など、その日のうちにやらなければいけないものだけに時間を使いたいですね。

予習や復習を考えるときも、平日と土日で分けて考えます。

土日は苦手分野の克服や6年生の過去問など、じっくりと時間を使って向き合いたい勉強に使います。

平日は計算や漢字など基礎的な知識や反復練習を積み重ね、土日で時間のかかる勉強に取り組むというイメージです。

親も時間に追われない土日のほうが、子どもが勉強で困ったときに手伝いやすいですからね。

時間が取れないときとゆっくり取れるときでやることを分けていくと、効率的に勉強が進められますよ。

人脈やお金を活用する

同じ塾に通う家庭同士で送迎を分担するなど、使える人脈があればどんどん使っていきましょう。

お金はかかりますが、個別指導塾や家庭教師を併用して勉強を見てもらう人もいます。

単純に成績を上げるためという理由もありますが、子どもが一人になる時間を減らすためだったり、塾の予習や宿題をこなすために使ったりする保護者もいるようです。

実際に「親がいないと勉強をしないから個別に通わされてる」と言っていた生徒もいました。

大手塾では系列の個別指導塾があることも多く、塾のテキストを使って勉強を見てくれるのでやりやすいかもしれませんね。

勉強ばかりで子どもが大変という気もしますが、集団授業では質問しづらいという子も、個別指導塾なら遠慮せず質問ができるなど、メリットも大きいと聞きます。

もちろん出費は痛いですが、子どもの性格によっては有効な方法と言えそうですね。

共働きでの中学受験は少なくない

共働きでの中学受験が大変なのは事実ですが、実際に共働きで塾へ通い中学受験に臨む家庭は多いと実感しています。

塾講師として電話で保護者の方からの相談を受けるときも、「仕事でなかなか勉強を見てあげられなくて……」というお話は何度も聞きましたしね。

共働きでの中学受験と塾通いについては多くの人が抱える悩みです。

一方で共働き家庭は、「親が大変だから自分も頑張らなくては」と子どもの自立心が育ちやすい環境であるともいえます。

我が家の娘は親に甘えて塾まで送ってほしいというタイプでしたが、私が仕事で行けない日は「大丈夫だよ、一人で行けるから」と元気に塾へ向かってくれていました。

「家にいるなら甘えるが、いなければもう自分でやるしかない」と思えるのでしょうね。

子どもにかける時間が取れないからこそ、子どもと一緒に頑張っていくという姿勢で進めていくのも良いかもしれませんね。

我が家もフルタイムの外勤ではないものの共働き家庭です。一緒に頑張りましょう!

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※記事の内容は執筆時点のものです

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