中学受験ノウハウ 連載 塾のトリセツ

直前期こそ迷ったら塾に相談を!│ 中学受験塾のトリセツ#28

2023年12月26日 天海ハルカ

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塾に相談、していますか?

「忙しそう」「どう相談すればいいかわからない」「前に相談したけど素っ気なかった」など、塾への相談にハードルを感じる人も多いのでは。

そうはいっても塾講師としては、落ち着いて受験に向かうために不安は早めに解消してほしいと思っています。

とくに中学受験直前期の6年生のご家庭は、相談してみようかなと思ったときはためらわないでほしいですね。

今回は、本番を目の前にした6年生保護者に向けた【塾への相談のススメ】をお送りします。

塾には相談しづらい? それでも相談を試してほしい

「塾に相談しづらい」という声も聞かれますが、塾講師としては「いつでも相談してほしい」という気持ちでいます。

とくに受験直前期というのは、たったひと言のアドバイスが合格・不合格を分ける可能性があるわけで、どんな塾講師でも、この時期の6年生からの相談には最優先で対応します。

しかし、保護者目線で見ると、相談にはハードルがあるという気持ちもわかります。

忙しい塾講師も6年生は優先する

確かに塾講師は忙しいです。フォローが必要な新入生や6年生への対応に追われ、4~5年生の保護者にとっては、塾講師はいつも忙しくしている存在に見えるかもしれません。

とくに夏期講習から後は、6年生の過去問添削や個人面談などが入ってくるため、ほかの学年からの電話相談には時間がなかなか合わないことも。

「塾には相談しづらい」という刷り込みができてしまっていても無理はありません。

相談しにくい理由がその講師の資質にあることもあるが…

また、「4年生、5年生のときに相談したが素っ気なかった」というケースでは、その講師に問題があった可能性も考えられます。

親御さんと話すときにやや不愛想であったり言葉選びが高圧的であったりということは、残念ながらあるんですよね。

いっぽう、直接話すのは問題なくとも電話だと緊張してしまう……という講師もいます。

6年生をメインに担当する講師なら電話相談に慣れている講師が多いはずなので、その点では少し安心できるのではないかと思います。

受験直前期は保護者と講師に温度差がほとんどない

ほかには、とくに4年生など早い時期での相談だった場合、親御さんの気持ちと講師の考えに温度差があった可能性もあるでしょうか。

保護者としては「今しっかり考えたい」のに、塾講師としては「おいおい考えていきましょう」というような温度差は、たとえそれがきちんと考えた上での対応だとしても相談しづらさを加速させてしまいますよね。

そういう意味では、受験直前期というのは、保護者側と塾側とで温度差がもっとも出にくい時期

「前は、相談してもあまり熱心に対応してもらえなかった」という記憶がある保護者の方も、直前期だからこそ、試しに塾に相談してみてほしいです。

以前とはまったく違った、熱のある対応が返ってくる可能性は十分ありますよ。

直前期に迷いが出るのはよくあること

塾講師としては、生徒たちが行きたいと思う学校に合格してくれるのが一番です。

極端な話、塾講師に相談しなくても、望む学校に合格していってくれるのであれば問題はありません。

しかし、受験直前というのは、生徒本人にも保護者にも、さまざまな迷いが出てくる時期

塾には相談しないまま極端な決断をくだしてしまった保護者から、事後報告されてびっくり、という例も過去に多く見てきました。

講師も避けたい! 保護者からの事後報告の事例

たとえば、受験直前になって急に「志望校のレベルを下げることにした」と言いだした家庭がありました。

志望校のレベルを下げること自体は、ご家庭と本人が納得していれば悪いことではありません。しかし、このケースの問題点は、出題傾向の違う学校を選んだところでした。

国語を例に挙げると、これまで記述を中心に対策していたのに、記述問題が少なく選択問題がメインという学校を新たな志望校として設定したのです。

偏差値的には下でも、傾向が違うと必要な対策も変わってきます。

受験直前期の対策の変更は、子どもにとっては大きな負担になってしまうでしょう。

ほかには「志望校一本で滑り止めも練習校も受けないことにした」「受験まで休塾して、テキストだけもらって親とマンツーマンで勉強する」と冬の個人面談で急に言い出されるご家庭も。

直前期になると追い込まれて極端な決断に走ってしまう、というのはめずらしいことではありません。

が、志望校一本ではテストの雰囲気に飲まれて実力が発揮できないリスクが生まれますし、受験まで休塾すると相対的な学力が測れず到達度がわかりにくくなるというデメリットが出てきます。

このような極端な選択であっても、直前ではなくもっと早い段階で相談してくれていれば……。

それぞれのメリットとデメリットを提示しながら、卒業生の受験結果など客観的なデータも交えて、もっと効果的なアドバイスができたのにと、講師としては歯がゆい気持ちになるのです。

受験で悩むことがあるなら、ぜひ決断をする前、悩み始めた時点で、早めに塾に相談してほしいですね。

直前期、塾講師への相談のコツ

そうはいっても、塾にはなんだか相談しづらいなと、一度思ってしまうと、なかなか一歩は踏み出せないものですよね。

塾講師の視点をふまえ、少しでも相談のハードルが低くなりそうな方法をご紹介します。

取り入れやすいと感じたものだけでも試してみてください。

予約を取る

塾に予約システムがなくても、「後日○○について相談したい」と伝えるだけでOKです。

これは、親御さんが納得のいく話ができるよう、塾講師側がしっかりと準備する時間に繋がります。

お子さんの最近の成績推移や志望校の情報集めなど、準備の時間があったほうが的確かつ具体的な話ができるんですよね。

多くの塾では科目ごと、授業ごとに講師が変わります。

面談まで時間があれば、他の講師からもお子さんの状況をヒアリングでき、全科目を通した具体的なアドバイスが可能になります。

「国語だけなら第一志望校は余裕だが、算数は不安」というように、科目ごとの成績にバラつきがある子どもは少なくないですしね。

もちろん「今話したい」という電話でも対応は可能ですが、どうしても手持ちの情報だけで話すことになり、焦点がぼやけてしまうことも考えられます。

聞きたいことが決まっているなら、事前に予約をしておくことで有意義な回答がもらえる可能性が高まると思います。

とりあえず言ってみる

予約するというのがどうも難しいという場合もあるでしょう。

その場合、どんなに難しい相談内容でも、とりあえず言ってみたほうが話は進みます。

たとえば、直前になって受験校を大幅に変えたくなった、というような話は伝えにくいですよね。

面談を重ねて決めた受験校だからこそ、今さら変更を言い出すのは勇気がいる……。

しかし、受験するのは講師ではありません。

最終的に願書を書いて提出するのも試験を受けるのも費用を支払うのも、受験生本人と保護者の皆さんが当事者です。

お子さんの気持ちや親御さんの事情を聞き、リスクやデメリットなども考えながら対策を提案するのが塾の役目ですが、塾は最終判断に必要な情報を出すところまでしかできません。

塾が何を言おうと、最終判断を下すのは本人とその家族。

そう思えば、相談に躊躇する必要はありませんし、サポート役である講師に一応はなんでも話しておいたほうが得だという風にも考えられないでしょうか。

塾から有益な情報を引き出す気持ちで、悩んでいることや気になっていることはストレートに話してみるのも、賢い塾の使い方といえますよ。

塾にとっては受験生が最優先

中学受験はお子さんにとってもご家庭にとっても人生の一大イベント。

受験直前期に受験当事者やその家族が冷静さを失うのはめずらしいことではありません。

塾に相談することがすべてではありませんが、誰かの意見を聞くことで客観的な判断ができることはあるでしょう。

そして塾としては、6年生を勝負の年だと思っているため、最優先で対応したいと考えています。

相談したいのに相談しづらいと思っているのなら、直前期の相談は塾にとって優先度が高く、ないがしろにすることはまずない、という事実を知ってほしいです。

そのうえでぜひ、直前期だからこそ、お子さんのために塾と講師を利用しつくしてください!

なお、塾への質問については、以下の過去記事でも解説していますので、よかったら参考に。

この連載では匿名での質問を受け付けています。ぜひ、塾について、中学受験についての質問などを、こちらの質問受付フォームからお寄せください。

※記事の内容は執筆時点のものです

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