中学受験ノウハウ 連載 今一度立ち止まって中学受験を考える

塾講師による犯罪や問題行動から子どもを守るために保護者にできること|今一度立ち止まって中学受験を考える

専門家・プロ
2024年3月14日 石渡真由美

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昨年から今年にかけて、中学受験界では衝撃な事件が次々と発覚しています。老舗大手塾で、講師(元)が児童の下着をスマートフォンでくり返し盗撮していた、同じく大手個別指導塾で、講師(元)が塾の入居するビルのトイレに盗撮用のカメラを仕掛けていた……

許しがたい所業です。なぜ、このような事件が起きてしまったのか──。

原因のひとつとしては、塾という場所が、かなり特殊な成り立ちで運営されていることが挙げられます。

今回は、塾に通う子どもを守るため、保護者の方にぜひ知っておいていただきたいこと、気を付けていただきたいことを、お話ししたいと思います。

塾講師の質はまちまち、生活は夜型で土日も休めない

ご存じの通り、塾は勉強を教える場所です。

しかし、それを教える講師には、学校の先生のような資格は必要ありません。私自身もそうでしたが、大学生のときに塾講師のアルバイトから始まって、そのまま講師になる人がいたり、何か別の仕事や資格取得のための勉強をしながら、講師をしていたりする人もいます。

それが悪いというわけではありませんが、ある程度の学歴があれば誰でも比較的簡単に講師になれてしまうため、講師の質はまちまちであることをまずは知っておきましょう。

また、講師の仕事は夜が基本。進学塾となると土日出勤も多いので、同世代との交流が持ちにくいというデメリットがあります。もっと言ってしまうと、恋人が作りにくい、恋愛経験を重ねづらい環境だということです。そのことに悩んでいるか、あまり気にしていないかは人それぞれではありますが、塾講師はそういう環境で生きているということをまずは認識していただきたいと思います。

子どもと講師が直接つながりやすくなっている

恋愛経験が少ないからといって、犯罪に走る講師はごく一部です。でも、恋愛経験が少なく、子ども達に慕われると、「自分はモテるのではないか」と勘違いしてしまう講師はもう少し多いわけです。

また、実際、子どもも高学年になってくると、若い講師にある種の憧れを抱くこともあります。そして、生徒から「先生、LINE教えて〜!」と言われ、講師と生徒間で個人的なやりとりが始まってしまうことも。

もちろん、ほとんどの塾は講師と生徒のLINEのやりとりは禁止していますが、これといった強制力がないので、いとも簡単につながれてしまうのです。その結果、ニュースとして報道はされなくても、講師と生徒が必要以上に親密になってしまうという問題も起きやすくなっています。

ちょっと余談になりますが、今の時代、中学受験塾に通う小学生のほとんどがスマートフォンや携帯電話を持っています。これらを持たせるのであれば、親はきちんと管理をすべきです。子どもに全面的に任せてしまうと、友達とのLINEがやめられなくなったり、知らぬ間にいじめに加担していたりと、問題行動を引き起こすリスクが増えます。また、当然、勉強の妨げにもなります。

もし持たせるのであれば、ペアレンタルコントロールをしておく、使用時間を決める、使用場所を限定するなどのルールを設け、必ず守らせるようにしてください。常に親の目を光らせておくことが重要です。

その服装、勉強に適していますか?

さて、話を戻しましょう。

性犯罪が起きると、よく「露出の多い服を着ているから悪い」と被害者を責める言い方をする人がいて、またその発言に猛反発をする人がいます。確かに、被害者が悪いわけはありません。

でも私は、子どもの安全を守るために、親にできることはなんでもしてほしいとも思っています。子ども達が塾に行く服装は、勉強をするための服装にしてほしいのです。なぜ? そうした生徒を性的な目で見ている講師が塾にいないとは限らないからです。

夏になると、下着のような格好や、首回りが大きく空いているTシャツを着て、塾に来る子がいます。教壇に立つ講師からは、ノートに字を書いている女子の胸が丸見えということも実際にあるのです。

たとえば、本人がおおらかな性格で、まったく気づいていないし気にもしていないようであれば、私は「こら、見えているぞ!」とあえて本人に注意をすることもあります。呼び出してコッソリ指導するよりも、あけっぴろげに伝えてあげるほうが、性的なものを感じさせないからです。

そういうことが言えるのは、日ごろから生徒と信頼関係を築いているから。また、それができるのは、うちが小規模塾だからというのもあるでしょう。大手塾で講師がいきなりそんなことを言ったら「先生、キモっ!」と言われておしまいです。場合によっては、親御さんからの苦情につながる可能性だってあります。

でも、私は親御さんに言いたいのです。お子さんがどんな格好で塾に行っているか、ちゃんとチェックしていますか? 

塾は勉強をするところです。おしゃれをするところでも、恋愛をするところでもありません。だから、勉強するのにふさわしい服装で送り出していただきたいのです。

小学生、特に低学年の子どもにはまだ羞恥心というものがよく分からない子もいます。夏合宿などにミニスカートを履いてきて、体育座りをしてしまう子もいます。

これは本人が悪いのではなく、TPOを教えてあげない周囲の大人に否があると思います。親御さんは、その場にふさわしい服装があること、そして、「自分の身は自分で守る」ことを子どもに教えてあげてほしいのです。

「なんで、一講師であるあなたにそんなことを言われなきゃいけないのよ!」と、お怒りになる親御さんもいるかもしれません。ならば、試しにX(旧ツイッター)で、「#中学受験」と入力して、検索をかけてみてください。どうですか?すぐに「中学生とつながりたい」などといった怪しげな投稿や広告が流れてきませんか?

このように、世の中は危険がいっぱい潜んでいること、子どもを性的な目で見る大人が一定数存在していることから、親御さんたちは目を逸らさずにいてもらいたい。

これだけ多くの塾が乱立している世の中、多くの塾は人材の確保に苦労しています。なかにはおかしなことを考える講師がいても不思議はありません。どこに交じっているか分からないのだから、全員警戒するくらいの気持ちで、まずは服装に気をつける。これだけでも自衛になります。

とくに注意すべき講師と、気になるときの動き方

もちろん、おかしな講師ばかりがいるわけではありません。塾の講師になる人は、基本「勉強を教えることが好き」「生徒たちの伴走者になりたい」と、子ども達のためを思って頑張っているケースがほとんどです。

けれど、そうした講師と、そうでない講師を見分ける絶対の方法などありません。では、どうすればいいか。なるべく、目を光らせておくのが大事です。仮にそこに犯罪者予備軍がいたとしても、「まずバレないだろう」と思わせてはいけません。

もう少し具体的に、注意すべき講師と、対処法をお話します。

まず、生徒と個人同士でつながろうとする講師は非常に危険レベルが高いです。仮に生徒から「LINE教えて」といわれても、良識ある講師であれば直接のやりとりは断るでしょう。もしどうしても必要があるのであれば、親御さんを含めたグループチャットにすべきでしょう。

また、仮に子どもがその講師に好意をもっている様子でも、複数の講師がいるなかで、特定の講師ととくに親しくしているようであれば、注意しておくのがよいでしょう

子どもたちは若い講師と親しくなることが多いです。その講師に直接ではなく、塾長など立場が上の人に「うちの子、○○先生とずいぶん親しくしている様子ですけど、大丈夫ですかね?」と変化球を投げておくのがおすすめです。

こういう一言を伝えておけば、上司は目を光らせてくれるでしょう。親の目と塾長の目と複数の目があれば、おかしなことに発展することはまずありません。送迎などでちょくちょく親御さんが塾に顔を見せ、講師と目を合わせておくだけでも効果があります。

当然の顔をして生徒の身体に触れてくる講師など、私に言わせれば論外です。

小学生の場合、自分が性対象として見られているかもしれないなんてことを、まったく知らない子もいます。そういう場合は、「塾の先生にジロジロ見られたりすることはない?」「頭をぽんぽんされたり、肩に手を置かれたりすることはない?」と聞いてみるといいと思います。そうやって、「こういう行為をされたら、注意をするんだよ」と教えてあげることも大事。わが子を守れるのは、親しかないのです。

まとめ

ありきたりのことをお話ししても仕方がないので、今日はかなり突っ込んだ内容のこともお伝えしました。

「なんでも疑うと塾との関係がギクシャクしてしまうのでは」「モンスターペアレンツと思われないかしら」なんて心配なさっている親御さん、そんな風に気を遣う方はまず「モンペ」と化すことはありませんので安心してください。

それに、塾関係の事件が立て続けに起きたことで、どこの塾も講師の問題行動や犯罪には神経を尖らせています。保護者からの相談が事件の抑止に繋がるかもしれないわけですから、おろそかにする塾はそうそうありません。気後れせずに塾に目を光らせてください。

仮に万が一、そのために塾との関係が一時的にギクシャクしたとしても、お子さんの安全と比べれば何ら重要なことではありません。

塾に入れておけば安心、なんてことはないということを、親御さんには知っておいていただきたいのです。

※記事の内容は執筆時点のものです

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