連載 中学受験は親と子の協同作業

本当にその併願校で大丈夫?|中学受験は親と子の協同作業! 正しい理解がはじめの一歩 Vol.18

専門家・プロ
2018年10月25日 石渡真由美

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以前の記事『中学受験 実は一番大事なのは「併願校」選び!?』では、併願校を選ぶ時期とポイントについて解説しました。過去問に取り組む時間を考えると、併願校は9月頃に決めておくことが理想ですが、現実はまだ決められないというご家庭も多いことでしょう。

第一志望校にチャレンジする気持ちがモチベーションを高める

夏休み明けの9月・10月は、子どもは疲れが出やすく、また苦手分野に取り組む時期でもあるので、成績を伸ばしにくい傾向にあります。そのため、9月から毎月実施される合否判定模試で思うような結果が出せず、併願校を検討する以前に、第一志望校を変えた方がいいのではないかと迷い始めるのもこの時期です。

でも、9月・10月の2回の合否判定模試の結果だけで決めてしまうのは、まだ早いかもしれません。

その理由のひとつは、これまで目標にしてきた第一志望を変えると、「やっぱり僕はダメなんだ……」と、お子さんの勉強に対するモチベーションが下がってしまうことがあるからです。もうひとつの理由は、中学受験は最後まで何が起こるか分からないからです。

9月・10月に成績が伸びなかったのに、ここから大きく伸びて逆転合格をする子が毎年たくさんあらわれます。第一志望校はモチベーションを高く維持するためにも、チャレンジ気味で良いのです。

第二・第三志望校は「必ず合格する」ことを意識して慎重に選ぶ

でも、第二・第三志望校に関しては、慎重に選ぶ必要があります。なぜなら、中学受験で第一志望校に合格できる子は、その学校を受けた人数の約3割から5割で、それ以外の多くの子は第二・第三志望校へ通うことになるからです。

第一志望校が現在の学力レベルではかなり厳しい状態で、チャレンジ校となる場合、第二志望校に必ず合格することも目標に勉強を進めていきましょう。そのためには、併願校は第一志望校と問題傾向が似ている学校の中から選ぶことが必須です。また、偏差値ランクでは第一志望校を偏差値60の学校にするなら、第二志望校は偏差値52~55くらいの学校が適しています。

とはいえ、10月の時点では、第二志望校でも合否判定模試で合格可能性80%以上が取れている子はあまりいないでしょう。入試では、合格可能性30%〜80%の子が合否を競うことになります。模試ではあまりよい結果が出ていなくても、今後伸びていくことを信じて励まし続けてください。第二志望校の過去問演習と、そのふり返りに全力を注ぐようにアドバイスを続けてください。

この時期、親御さんは模試の結果に一喜一憂せず、「大丈夫! ここからが本番だよ」「あと5点だけとれれば、合格ラインクリアだよ」と、できるだけ前向きな声かけを続けてあげてください。

併願校は2月1日・2日の結果を踏まえて2パターン設定しておく

東京・神奈川の入試は、2月1日〜3日が本番になります。多くの場合、第一志望校の入試は2月1日です。そこで本命に合格したら、その時点で受験は終了です。

しかし、そこで合格がとれないと2日目、3日目と長引いていきます。一般的には3日までに勝負がつくと言われていますが、なかなか合格がもらえず、入試を受け続ける子もいます。

第一志望校がチャレンジ校の場合、第二志望校は確実に合格したいものです。しかし、わずか11歳・12歳の子どもが挑む受験に“確かなもの”はありません。合否判定模試では合格可能性が80%で、過去問でも合格者平均ラインをクリアしていたのに、当日緊張してしまい、実力が出せず不合格になってしまうこともあります。

そこで、併願校は、2パターン考えておくことをおすすめします。

ひとつは「第二志望校が合格した場合」、もうひとつは「第二志望校が不合格だった場合」の併願パターンです。

2月1日の第一志望校が×、2月2日の第二志望校の合格発表が当日の夜の場合、2月3日の受験校を2つ準備しておきます。2月2日が合格していれば、第一志望校に準じる学校を、不合格だったらより安全な学校を受けられるように出願しておくという方法です。

受験校の選択は偏差値15の幅をもたせる

もしも第一志望校の偏差値が60で、偏差値55の第二志望校が不合格だった場合、第三志望校以降は偏差値45までを視野に入れておきましょう。

第一志望校のチャレンジ校が偏差値60の場合、偏差値が10以上も下の学校を受けるなんて、と思うかもしれませんが、入試当日というのは何が起こるかわかりません。

第一志望校、第二志望校と続けて不合格になってしまった場合、気持ちを立て直すことができない子もいます。強気な併願パターンを組んでしまうと“全落ち”になってしまう危険度が高まることがあるので注意が必要です。

最初から「うちは第一志望・第二志望がダメだったら、地元の公立中に通わせる」と決めている家庭であれば、結果は結果として受け止め、これまでの頑張りを労って、3年後の高校受験へと気持ちを切り替えるといいでしょう。でも、そうでない場合、できることなら“全落ち”は避けたいものです。

本命一発勝負の傾向が強い関西の入試と違って、首都圏は私立中高一貫校の数が多い分、受験のチャンスがたくさんあります。第三志望をそこまで落としたくないのであれば、偏差値50あたりの学校を受けてもいいけれど、第四志望以降は確実に合格できる学校を確保しておくことをおすすめします。

どんな結果になっても「この学校なら行きたい」と思える学校選びを

首都圏では、2月4日以降も3次試験、4次試験を設定している学校があります。偏差値でいうと50前後より下の学校ですが、「英語教育がすぐれている」「基礎学習の指導に熱心」「先生方が親身で熱心」など、特色のある学校もたくさんあります。そのような学校に通いながら、大学受験で雪辱を果たすことを目標にがんばることもできます。

ただし、お子さんの性格とその学校の校風がまったく合わない場合や、親御さんがあからさまにがっかりし、いつまでも「受験に失敗した」という気持ちを引きずっていると、入学後、お子さんがつらい思いをすることになります。

受験校は第一、第二、第三志望だけでなく、もしかして受けるかもしれない学校もきちんと訪れ、その学校のよさを知っておくことが大事です。また、“おさえ校”だからと甘くみず、過去問も最低1、2年分はやっておくようにしましょう。

どんな結果になっても「この学校なら行きたい」と思える学校を選ぶことが大事です。中学受験の目標は志望校に合格することですが、中学受験の結果で人生が決まってしまうわけではないのですから。


これまでの記事はこちら『中学受験は親と子の協同作業! 正しい理解がはじめの一歩

※記事の内容は執筆時点のものです

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