連載 中学受験は親と子の協同作業

入試直前期 これだけはやっておきたい親のタスク|中学受験は親と子の協同作業! 正しい理解がはじめの一歩 Vol.24

専門家・プロ
2018年12月27日 石渡真由美

2018年も終わりに近づき、受験生の6年生は入試直前期に入りました。でも、この時期になっても、ほとんどの子が、苦手分野を克服できていなかったり、ケレスミスで悔しい思いをしていたりと、不安要素を抱えているものです。

でも、そろそろ本番に向けて、気持ちを整えていきましょう。

優先すべきは子どもの健康とメンタルの管理

入試直前期はできていないことが気になるものです。けれども、今の時期に、あれもこれもとやらせるのは、かえって子どもの気持ちが焦るだけ。

この時期に最優先すべきは、苦手分野をつぶすことではなく、入試本番に向けて体調管理と心の安定を保てるようにすることです。それには、まず睡眠をたっぷりとることが大切。どんなにやり残していることがあっても、小学生なら夜10時には寝かせてあげてください。

逆に朝は、6時頃起きられるようにしておくといいですね。人間の脳は起きてから3時間後くらいから本調子になると言われています。入試は8時半から開始する学校がほとんどです。冬の5時半起きはさすがに早くてしんどいでしょうから、6時を目標に起きるようにしましょう。

また、緊張からあまり食が進まなくなることもあります。無理にたくさん食べさせる必要はありませんが、朝昼晩一日3食は必ず食べるようにしましょう。生活のリズムを整えることは、気持ちを整えることにもつながります。

直前期 言ってはいけない親のひと言

とはいえ、この時期はやっぱり親も子も不安です。でも、子どもの不安は、意外と親には伝わらないものです。本人は「もし、不合格だったらどうしよう?」と不安な気持ちでいるのに、実際の勉強はまったく本気を感じさせない。そして、相変わらずつまらないケアレスミスをしてしまう。

そんなとき、親御さんはつい「こんなんじゃ合格できないわよ!」と言ってしまいがちですが、それは絶対に言ってはいけないNGワードです。

この言葉を聞いて「なにくそ!」と思えるほど、小学生の子どもはメンタルが強くありません。親からすれば発破をかけたつもりかもしれませんが、かえってやる気をなくすだけです。

逆に「必ず合格してね!」とプレッシャーを与えるのもよくありません。中学受験に限らず、入試は水ものです。過去問ではいい点を取れていたのに、本番で緊張してしまい、実力を発揮できずに不合格になってしまう子はたくさんいます。親御さんの「合格して欲しい」という気持ちは分かりますが、入試直前にこの言葉をかけるのは控えましょう。

また、「○○ちゃんは合否判定模試で合格可能圏70%を出したというのに、あなたは……」といったように、他の子と比較するのもよくありません。途中経過がどうであれ、入試は本番で実力が出せた者勝ち。○○ちゃんと競っても意味がないのです。

入試直前期 言ってはいけない親のひと言

・「こんなんじゃ合格できないわよ!」(脅し文句)
・「必ず合格してね!」(プレッシャー)
・「○○ちゃんはできているのに、あなたは……」(他の子との比較)

直前期は得意7:苦手3の割合で、子どもに自信を持たせることが大切

では、直前期はどのように勉強を進めていけばよいのでしょうか?

苦手分野がまだ残っているという子がほとんどだと思いますが、直前期に入ったら、苦手分野から手を離し、4科全体のバランスを整え、総合点を上げていくようにシフトチェンジしていきましょう。

中学受験では満点を取って合格する子はほとんどいません。わずか1〜2点の差が合否を決めます。ですから、この時期は解けるか解けないか分からないような難問や、時間がかかってしまいそうな苦手分野は「捨てる」覚悟も必要になってきます。

お子さんの現時点での状況にもよりますが、直前期は得意分野7割、苦手分野3割を目安に勉強を進めていくといいでしょう。得意分野を中心に進めていくのは、自信を持たせるためです。得意分野では、確実に点を取るようにします。

この時に気をつけたいのが、得意な分野の問題ほど本番でミスをするケースが多いこと。子どもは「分かった!」と思った瞬間から、速く解こうとします。しかし、この「分かる問題」こそ、落ち着いて取り組み、確実に点を取る必要があるのです。

苦手分野は正解すべき基本問題は取れるようにしておきましょう。もし余裕があれば、あと少し頑張ればできそうという問題までは手をつけてもいいでしょう。ここで数点上げるだけでも、結果が変わってきます。ただし、それ以上は深掘りしてはいけません。今の時期に大事なのは、全問正解を狙うのではなく、「合格のための戦略」を考えることです。

入試当日に慌てないために今からやっておきたいこと

大人でも入試や発表会など、何か結果や成果を出さなければいけないときというのは緊張するものです。まして、わずか12歳の子どもが挑む中学受験は、当日のメンタルがどうなるか予測ができません。

そこで、ぜひ試していただきたいことがあります。それは、入試前日までに数回、当日の自分をイメージしてみることです。とはいえ、初めてのことをイメージするのは難しいでしょう。そこで、親御さんが問いかけをしてあげてください。

例えばこんな感じです。

「朝起きたら、どんな光景が思い浮かぶ? 台所からはどんな匂いがするかな?」

「学校の最寄り駅に着いたら、どんな風景が見えるかな? 受験生がいっぱいいるかな? みんなどんな表情をしている?」

「学校に着いて、お母さんと別れたから、まずどうする? トイレはどのタイミングで行っておこうか?」

「さぁ、いよいよ入試が始まるよ。そのとき、教室はどんな感じ?」

「『はい、始め!』という号令がかかったよ。そしたら、まずどうする?」

こういった感じで、朝起きてから入試が始まるまでの自分をイメージさせるのです。

もし、イメージをせずに当日を迎えたら、受験会場の最寄り駅でたくさんの受験生を見ただけで、ドキドキしてしまうかもしれませんし、中学受験ではお馴染みの“塾の先生の出迎え”もかえってプレッシャーに感じてしまうかもしれません。

でも、一度でもイメージをしていたら、もう少し落ち着いていられるでしょう。もしかすると、「あ、僕がイメージしていた通りだ!」と楽しめるかもしれませんよ。最後は体調を万全に整え、落ち着いて入試に臨むことが、合格のカギを握ります。


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※記事の内容は執筆時点のものです

西村則康
西村則康 専門家・プロ

プロ家庭教師集団「名門指導会」代表
中学受験情報局「かしこい塾の使い方」主任相談員

にしむら のりやす日本初の「塾ソムリエ」としても活躍中。40年以上中学・高校受験指導一筋に行う。コーチングの手法を取り入れ、親を巻き込んで子供が心底やる気になる付加価値の高い指導が評判。暗記や作業だけの無味乾燥な受験学習では効果が上がらないという信念から「なぜ」「だからどうなる」という思考の本質に最短で入り込む授業を実践している。また、学習指導だけでなく、受験を通じて親子の絆を強くするためのコミュニケーション術もアドバイスする。「中学受験は日常生活を犠牲にしてまで行うものではない」「主役は塾の先生や家庭教師ではなく、お子さんとご家庭だ」という「生活の延長線上の受験」を理想に掲げている。著書に『中学受験は親が9割』(青春出版社)、『中学受験基本のキ! (日経DUALの本)』(日経BP社)など、20冊を超える。

西村則康公式サイト http://www.nishimuranoriyasu.com/
名門指導会 https://www.meimon.jp/
中学受験情報局「かしこい塾の使い方」 https://www.e-juken.jp/

この記事の著者

フリーライター。子供の誕生をきっかけに、わが子の成長に合わせ、ベビー雑誌、育児・教育雑誌、塾専門誌で取材執筆。6年前に子供の中学受験を経験したものの、国立大学の附属中学で併設高校が無かったため、その3年後に“高校受験生の母”、またその3年後に“大学受験生の母”も体験。中・高・大の3つの受験を知る受験ライター。