連載 合格する子どもの伸ばし方

「一点集中タイプ」の子の失敗&成功エピソード|本物の力を育てる「合格する子どもの伸ばし方」

専門家・プロ
2020年1月27日 松本亘正

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子どものタイプによって、親の関わり方や言葉のかけ方を変えたほうがぐんと伸びる。子どもは、大きく4つのタイプに分けることができる ―― 中学受験専門塾 ジーニアス代表、松本亘正氏の著書『合格する子どものすごい伸ばし方』から、わが子のタイプを知り、子どもの力を伸ばす方法を紹介します。

一点集中タイプの失敗エピソード

幼児期や小学校低学年のときには才能を感じたのに、高学年になると集団に埋もれてしまう……というケースはよくみられます。

四谷大塚の模試でも学年トップクラスの子がいました。彼は塾の日曜講座を受けていました。算数がとても得意で、理数系はいつも偏差値70以上ある一方、国語は偏差値60くらいとやや低め。クセのある姿勢で問題を解いていたところも、直すように先生から指導されていたそうです。

じつは、一点集中タイプのなかには、変わった姿勢で机に向かう子たちがいます。まわりから見ると変な姿勢に映るのですが、本人はとてもリラックスしているので、無理に直さないほうがいいこともあります。

彼はその後、国語の塾にも通うようになり、読解力と語彙力が身についたことで、偏差値も65にアップ。これで鬼に金棒と思われたのですが、最難関校を目指す日曜講座のクラスで、算数が1番でなくなっていたのです。

国語は伸びたのに、算数や理科で突出していたひらめき力が薄れていました。算数や理科で解いたことのない問題に取り組むときには、ひらめき力が問われるのですが、その力が人並みになってしまった結果、算数・理科ともに偏差値が65前後まで下降することに……。結局、四科目を合計すると、偏差値が70から65くらいに下がってしまい、最難関校には不合格という結果になってしまいました。

親はすべての科目をまんべんなく伸ばそうとしてしまいがちですが、一点集中タイプは、無理にそうさせようとすると、逆に才能のある科目の成績を下げてしまうこともあるのです。

一点集中タイプの成功エピソード

ある男の子の話です。小学3年生の彼を教えたとき、2つのことに驚きました。まず、小学3年生の算数の授業なのに、√(ルート)を使って問題を解いたことです。自宅で先取り学習をしていたようです。その子は学校でトップの成績かと思いきや、10番くらいだったと、あとでおかあさんから聞きました。才能は間違いなくあったのですが、まだ発揮できていなかったか、うまく学校の勉強に合わせることができていなかったのでしょう。そのうちに、学年が上がるにつれ、塾内の模試でも1番を取ることができるようになっていきました。

彼が次にぶつかった壁は、「式を書かない」ことでした。手抜きをしているわけではなく、ぱっと答えが出てしまい、答えを書き終わると、それまでの思考過程を忘れてしまうのです。いつもなら注意して、式を書くことを徹底させます。難しい問題になるにつれ、頭の中で整理するには限界が出てくるからです。その結果、伸び悩んでしまうのです。実際に、彼も難問に一発で正解することがある一方で、ミスが目立っていました。

そこで、式を書かないことについてはあまり厳しく注意をすることはせず、徹底して取り組んでもらう時期を、少し遅くしました。せっかく持っている思考力を摘まないほうがいい、と思っていたからです。高学年になると、上手に手を抜くことも覚えてきます。宿題も言われるまで提出しなかったり、やっていないことを注意されたら一気に終わらせる。コツコツ勉強していくのは得意ではなかったようです。

授業で、「あれ?今日、宿題を持ってきていないんだー。来週提出しないと次は2倍の量だな」と言うと、きちんと翌週にこなしてきます。ときには、本当に終わっていたのに家に忘れて、あわてて宿題を自宅に取りに帰ったこともありましたが、1日単位、1週間単位で細かく結果を求めることまではしませんでした。

結果、御三家と呼ばれる中学校のひとつに合格。直すべき点もありましたが、無理に直すとほかのよい部分も失われると思い、あえて徹底してよくないクセを直そうとはしなかったことが、うまくいった大きな要因だったと思っています。

子どものタイプは、次のページからチェックできます。

【あなたの子どもは何タイプ?】チェックリストで子どものタイプを確認しよう

イラスト hashigo(silas consulting)


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※記事の内容は執筆時点のものです

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