
【小6理科/滑車と輪軸】定滑車と動滑車。2つの滑車の使いみち|中学受験のツボ[理科編]
こんにちは、伊丹です。今回は小6理科の単元から、滑車と輪軸について扱います。
事前にチェックしたいポイント
定滑車と動滑車の違い
問題:定滑車と動滑車は、それぞれ何をする道具?
滑車とは簡単にいうと、わっかに「ひも」などをひっかけて回す道具ですが、中学受験では大きく「定滑車」と「動滑車」に分けられます。
定滑車は文字通り「固定」されている滑車で、ひもを引っ張っても滑車自体は動かないのに対し、動滑車は滑車自体が固定されていない「動く」滑車です。
■定滑車
■動滑車
定滑車は「荷物」と「人がひっぱるひも」が直接つながっているので、もし30kgの荷物を持ちあげたい場合、30kgの力でひっぱる必要があり、楽ができる道具ではありません。
しかし、この絵のように定滑車を使うと、物を持ち上げるときに、手で抱えるときのような上向きの力ではなく、下向きの力を加えて持ち上げることができるようになります。つまり、定滑車は力の向きを変えることができる道具なのです。
それに対して、動滑車は「荷物」を「2本のひも」で支えているので、もし30kgの荷物を持ちあげたい場合は、その半分の15kgの力でひっぱれば、荷物を持ち上げることができるようになります。
このように、動滑車は必要な力を半分にすることができる、魔法のような道具なのです。
解答例
解答:定滑車は力の向きを変える道具で、動滑車は必要な力を半分にする道具
保護者向け(実は)
実際には動滑車自体の質量も考えると、動滑車を使って荷物を持ち上げる場合、荷物だけでなく、動滑車も引っ張り上げる必要があります。そのため、動滑車の質量の半分が余分にかかることになります。さらに、現実では、滑車を使ったときの摩擦力も無視できる大きさではないようです。
内容チェックポイント(1)
動滑車の弱点
問題:動滑車の弱点は?
このように必要な力を半分にできる動滑車ですが、動滑車にはひとつ大きな弱点があります。
それは動滑車を使うと、力を加えてひっぱらなければいけない距離が長くなることです。
定滑車は、荷物と人が持つひもが直接つながっているので、ひもを1m引っ張ると、当然のように荷物も1m上がりますが、動滑車の場合は、ひもを1m引っ張っても、荷物は半分の50㎝しか上がりません。
そのため、もし荷物を1m上げたいとしたら、その2倍の2mひっぱる必要があります。
このように、どのような道具を使って工夫をしても、必要な力を半分にしたら、ひっぱったときに荷物が上がる距離も半分になり、必要な力を3分の1にしたら、荷物が上がる距離も3分の1になってしまいます。
このことを「仕事の原理」といいます。
イメージとしては、山を登るときに緩やかな坂を選ぶと、最終的に、歩かなければいけない距離が増えるというのと同じです。
また、下の図のように動滑車を2つ組み合わせることで、必要な力を半分の半分、つまり4分の1にすることもできます。しかし、その場合はひっぱったときに動く距離も4分の1になってしまいます。
■動滑車2個セット
解答例
解答:力を半分にすることができるが、ひっぱったときに動く距離も半分になってしまう。
保護者向け(実は)
中学校の理科では「(加える)力」と「(物体の)移動距離」をかけたものを「仕事」といい、それはどのような道具を使っても変わらないという言葉で説明をします。この「仕事」は、本来は中学理科の範囲の内容ですが、イメージは中学入試でも持っておくと役立つので、中学生用の資料集・映像授業等で確認しておくとよい内容です。
内容チェックポイント(2)
輪軸
さらに発展させて、滑車と物を回転させて仕事をする「てこ」を組み合わせた道具が輪軸です。
■輪軸
上の絵の輪軸の場合は、中心からの距離が1:3となっているため、もし荷物が60kgだとすると、持ち上げるのに3分の1の20kgの力で済むことになりますが、やはりひっぱったときに荷物が移動する距離も3分の1になってしまいます。
まとめ
滑車、てこ、輪軸は特に点差が付きやすい領域です。ただ、考え方や使う計算は簡単なものが多いため、今回のポイントを押さえて、問題演習のときには、しっかり自分で説明できるような式を立てて、答えを出す練習をしてほしいと思います。
※記事の内容は執筆時点のものです