学習 連載 中学受験のツボ[社会編]

【小6社会/政治史】「武士の時代」の流れをつかむには|中学受験のツボ[社会編]

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2022年8月06日 池田良輔

保護者向けに中学受験の4教科のツボを解説。 社会編 吉崎正明先生池田良輔先生茂山起龍先生が担当します。
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国語算数理科

前回は、おもに古代~鎌倉時代初期の「天皇・貴族の政治(=朝廷)」のポイントを見ました。今回は平安時代末期~江戸中期の「武士の政治(=幕府)」を扱います。

戦いの名前や人名が多く出てきて迷いやすいですが、まずは大まかな流れをつかむところから始めます。今回は、そのためにおすすめしたい2つの作業を紹介します。

3つの幕府の比較表

ひとつめの作業が、鎌倉・室町・江戸の3つの幕府の比較表を作ってみることです。

表の項目は、以下のようなものが良いでしょう。

①成立した年~滅亡した年
②将軍(執権)の名字
③入試に頻出の将軍と、その人がやったこと
④幕府が開かれた場所
⑤政治組織の特徴
⑥地方支配の方法
⑦国際関係
⑧衰退の要因、出来事
⑨滅ぼした人・勢力

教科書を読みながら表を埋めてみて、空いたスペースに登場人物の絵を描いてみるのも面白いですね。

さらに、できあがった表を比較してその理由などを考えてみましょう。

たとえば「⑤政治組織の特徴」なら次のようなイメージです。

・なぜ「執権」の位置に「管領」が来ているの? 違いは? 江戸時代で言うと何だろう?

・「六波羅探題」って何のために生まれたの? 室町幕府や江戸幕府の組織図のなかに、同じような役割をしている機関はある?

このような問いを繰り返すと、着実に力がつきます。

幕府の組織図を「とりあえず丸暗記しなさい!」なんて言われても、頭がクラクラしちゃいますが、3つの幕府の特徴を並べて比較してみると、大事なところが浮かび上がってきやすいです。こういった「並べて比較する」のは、社会科以外の教科でも使える方法ですよ。

また、「⑧衰退の要因、出来事」や、「⑨滅ぼした人・勢力」は、この表で整理しておくと、前後の時代とのつながりが分かりやすくなります。

歴史の中でも、鎌倉・室町・江戸の3つの幕府の間にある時代は、特徴的です。

鎌倉時代から室町時代に変わるときの建武の新政や南北朝時代、室町時代から安土桃山時代に変わるときの戦国時代~安土桃山時代などは、つながっていく流れが見いだせるのではないかと思います。カラフルな矢印とメモで、気づいたつながりを結んでいけば、愛着の持てるマイノートが完成します。

源平交代思想

ふたつめの作業は、「源平交代思想」という考え方に基づいて大まかな流れの図を作ろう、というものです。

ほとんどの子供が「源平交代思想って何?」となるのですが、これは、簡単に言うと「平氏の血を引く者と、源氏の血を引く者が交互に武士の天下をとっていく」という考えです。

平氏も源氏も、天皇家の血を引く武家の名家でしたから、血筋を重んじる武士にとっては重要な要素だったようで、当時の武士は比較的強く信じていたのです。

特に幕府を開いた将軍一族は、いずれも源氏の血筋を名乗っていました。「足利」「織田」などの名字は、(源氏や平氏の血を引いているけれども)治めていた領地の地名からそう名乗り始めた、という理屈だそうです。

ちなみに、明智光秀(源氏)を討ったあとの豊臣秀吉も、一時期は「平秀吉」と名乗っていました。また、徳川家康は松平という名字だったにもかかわらず、源氏であった新田氏の支流「得川氏(とくがわし)」からヒントを得て、「徳川」と名乗り始めました。。これらの背景には、「源平交代思想」があったのです。

こうしたことを知ったとき、小学校時代の私は、なんだか彼らに人間臭さや親近感を覚えた思い出があります。

平氏

源氏

北条氏(平氏)

足利氏(源氏)

織田信長(平氏)

明智光秀(源氏)

豊臣秀吉(自称・平氏)

徳川氏(自称・源氏)

このような流れを、余白たっぷりの大まかな流れ図で描いて、そこに、勉強して得た知識を書いていくと見直ししやすいノートになるかと思います。

ついでにもう一つ。当時は、権力者が自分の名字や名前の一文字を、有力な部下にほうびとして与えることで、反逆を防いだりつながりを強くしたりという戦略がありました。こうした点に注目して、どの名前がどの人から来たのかを考えるのも、知識のつながりをつくる方法のひとつです。

どういうことかというと、たとえば足利尊氏は、もともと「高氏」と名乗っていましたが、後醍醐天皇に一文字もらって、「尊氏」と名乗りました。また、徳川家康は、豊臣秀吉から一文字もらって息子の名前を「秀忠」としています。徳川秀忠は、江戸幕府の2代目将軍ですね。このように、人の名前の由来から知識を紐づけるのもひとつの手段です。

ただ、その後の流れ、たとえば豊臣から徳川の時代への変化などを考えると、必ずしも反逆の抑止や、つながりを強化する戦略がうまくいったとは限らないことがわかりますね……。権力と時代の移り変わりをお子さんと一緒に考えると、ちょっと複雑な心境になってしまうかもしれませんが、親子で一緒に調べたり考えたりしてみると、グッと印象に残ると思います。

このように、「鎌倉・室町・江戸の3幕府の比較表」や「源平交代思想」を用いて、親子で歴史の流れをつかむようにしていくと、歴史を楽しく学習できますから、ぜひ試してみてください。

※記事の内容は執筆時点のものです

池田良輔
この記事の著者
池田良輔 専門家・プロ

SRP教育研究所 文系主任。既存の学習塾への疑問からSRP教育研究所の立ち上げに参画、文系代表を務める。教育哲学・教育社会学・教育史学等の複合領域が専門基盤。ある思想家の「消費者マインドの助長や蔓延が教育を危機に向かわせている」という主張に共感し、「学びの活性化」を授業の最重要目的として、チャレンジを続ける。長野県の喬木村出身で、「関東地区喬木村ふるさと会」幹事でもあり、東京の自治体や私学のお子さんの、自然体験を通じた豊かな学びの機会創出を画策中。