【小6社会/学習のコツ】公民の勉強のまえに「社会権のイメージ」をもっておこう|中学受験のツボ[社会編]
コロナ禍で自分のお店や会社の経営を続けられなくなり、お店をたたむことになった……というニュースを見たことがある子も多いと思います。
国や都道府県などが「支援金」としてお金を振り込んでくれた、というニュースを聞いたことがある子もいるかもしれません。
なにか困ったとき、国や地方自治体から援助してもらえる権利が私たちにはあり、これを「社会権」といいます。
社会権とは
社会権とは、次の3つの権利を指す言葉です。
社会権
1、生活保護をはじめとした生存権
健康で文化的な最低限度の生活を営む権利(第25条)
2、教育を受ける権利
公立学校に通う場合は、教科書・授業料が無償。貧富の差によって、受けられる教育に格差があってはならない
3、労働三権
いわゆる「お前の代わりなんて誰でもいるんだよ」という経営者の態度を正すため、労働者同士で「団結」して「交渉」し、結果が良くなかった場合は「行動」を起こす権利
そもそも「支援金」などのお金は、国民や都道府県民などから集められた税金をもとにしています。つまり、私たちのお金ということ。
このしくみを「所得の再分配」と呼びます。
みんなから集めた税金を、貧しい人たちを助けるために使う。
このことについて、皆さんはどう感じますか?
社会権が概念として捉えづらいところは、社会権より昔に成立した「自由権」「平等権」とちょっと違うところがあること。
いまの世の中では社会権の重要性が話題になることも少なく、馴染みがない子も多いでしょう。
そこで、まずはその歴史の流れを押さえましょう。
教科書どおりの説明ではなく、「どうやって成立したか」を理解しやすいように解説しますので、社会権についてのイメージをぜひ膨らませてみてください。
社会権の登場
憲法に社会権が登場したのは、1919年、ドイツの「ワイマール憲法」がその始まりとされています。
“1919年”という年号にピンときた子はさすが。第一次世界大戦においてドイツが連合国軍に負けた、そんな時期ですね。
日本が江戸時代のころ、イギリスを中心に産業革命が起き、経済がどんどん発展していきました。
その過程のなかで、貧しい人たちは労働者として安い賃金で働かされる一方で、お金持ちは資本家としてどんどん儲けを増やし、格差がどんどん開いていったのです。
そして、こうした現象を問題視する学者が現れます。
彼らの学問は、資本主義に対して「社会主義思想」と呼ばれました。
ちなみに社会主義といえば「マルクス」の名前が必ず出てくるため、この人が始めた学問だと思う人は多いようですが、実はマルクスが始めた「唯物(ゆいぶつ)論的社会主義」よりまえに、別の社会主義者がすでにいたのです。
しかし結局、そうした社会主義者の思想は“理想的すぎる”という意味を込めて「空想的社会主義」と呼ばれました。
マルクスは、いまの日本の状況を“代弁”していた
「もっとも有名な社会主義者」ともいえるマルクスに関する著作のなかに、面白い記述を発見しました。
「その全生涯が資本家のための労働に吸い取られている人は役畜にも劣る。彼は単に他人の富を生産するための機械に過ぎないのである。体は壊され、心は荒れ果てる。だが近代産業の全歴史が示しているように、資本は、阻止されない限り しゃにむに休むことなく労働者階級全体をまさにこのような最大限の荒廃状態に投げ込むことだろう。」
引用:『若者よ マルクスを読もうⅡ 蘇るマルクス』内田樹・石川康宏(2014)
この文を読んだとき、私は胸がズキズキしました。
ブラック企業、社畜、派遣切り……。
こうしたキーワードが踊る現代の日本を、まさに“代弁している”表現だと思ったためです。
他人事ではないなと思いましたが、逆に経営者からしたら「そんなの当たり前だろ」 という表現なのかもしれません。
しかし、マルクスはその先も書いています。
難しい本ではありますが、興味がある人は『若者よ マルクスを読もうⅡ 蘇るマルクス』をぜひ読んでみてください。
※記事の内容は執筆時点のものです
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