中学受験ノウハウ 連載 今一度立ち止まって中学受験を考える

志望校や併願パターンはいつまでにどうやって決めればよいの?|今一度立ち止まって中学受験を考える

専門家・プロ
2023年10月12日 石渡真由美

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中学受験に欠かせない志望校選び。しかし、偏差値だけで選んでしまうと、6年生のこの時期になって「偏差値があと5足りない! 第一志望校はやっぱり諦めるしかない?」「今から受験校を変えないと……」「併願校はどこにしよう?」と慌てることになります。では、志望校や併願パターンはいつまでに、どのような視点で決めていけばいいのでしょうか? いくつかのポイントをお伝えします。

6年秋、迫りくる受験本番、志望校・併願パターンはどう決める?

10月も半ばとなりました。6年生はいよいよ入試直前、2月1日を入試本番とすると、10月24日が本番100日前となります。1月10日に受験をスタートする場合、この記事を公開する10月12日がちょうど90日前にあたります。この時期は苦手分野の克服や過去問演習など、やらなければいけないことが山のようにあります。また、塾の授業は演習を中心としたアウトプット型になり、より本番を意識した内容になってきます。

いっぽうで、いよいよ出願手続きが見えてくる段階になり、多くの親御さんは志望校の絞り込みに頭を悩ませる時期でもあります。

「第一志望校」ではなく「第一志望群」という考え方で

「志望校や併願パターンはいつまでに決めればいいでしょうか?」

毎年必ず、親御さんから挙がる質問です。

この質問に対して、私はこう答えています。「8月末までにある程度の志望校を決めておき、9月から過去問演習をスタートする必要はあるものの、実際には12月までに『第一志望群』の学校を決めることを目標にしましょう。」

一般的に中学受験の勉強は小学3年生の2月から3年間かけて準備を進めていきます。6年生の1学期までは、中学受験に必要とされる膨大な学習範囲をインプットする期間です。そして、夏休みにこれまで学習した総復習を行い、2学期から演習問題を中心としたアウトプット型の授業に切り替わります。同時に、家庭では9月から志望校の過去問演習に取り組みます。6年生の9月から過去問演習をスタートさせるには、少なくとも8月末までにはある程度の志望校を決めておく必要があります。

しかし、この時期に志望校の合格レベルに達している子はごくわずかです。ほとんどの子が、まだまだ手が届かないところにいるでしょう。ここからの頑張りで大きく伸びて第一志望校に合格する子もいますが、現実はそれほど甘くはありません。実際、中学受験で第一志望校に進学できる子は全体の約3割と言われているのです。

では、志望校をグッと下げたほうがいいのかというと、それによってお子さんのモチベーションが下がってしまうのであれば得策とは言えません。そこで、私はよく「何が何でも第一志望校合格!」という考えから、「第一志望群を目標に頑張ろう!」という考えを持つようにお伝えしています。憧れの第一志望校は挑戦校としてチャレンジし、そのかわりに「この学校なら行ってもいいな」と思える次善校を2〜3校選び、「第一志望群」とするのです。これらの学校のどこかに合格できれば「わが家の中学受験は成功!」とすれば、強気すぎてリスキーな受験は避けられますし、どこかの学校で合格を手にすることができる可能性も高まります。結果、親子にとって幸せな中学受験で終わることができます。

第一志望群を決める際には次のことに気をつけましょう。

  • ①受験日が重ならないこと
  • ②偏差値は5以上の幅を持たせること
  • ③入試問題の傾向が似ていること

また、第一志望群の学校は、12月までに決めていきましょう。

その学校の特色が色濃く出る国語入試も判断材料に

受験校選びに過去問は非常に重要です。私は親御さんにもぜひ過去問を解いていただきたいと思っています。そう言うと、「私に算数なんてムリです!」とみなさんはおっしゃいますが、算数は難しくても、国語なら解けると思います。そのときに「どうしてこの学校はこんな物語文を出すのだろう?」「なぜここでこの人の気持ちを聞いてくるのだろう?」と不満や違和感を覚えるようなら、もしかするとその学校はお子さんに合わないかもしれません。というのも、国語入試にはその学校の思想が色濃く反映されるからです。

例えば近年人気の女子校、吉祥女子の国語入試では、必ず女子が主人公の物語文が出題されます。また、論説文では女性の自立や社会的地位をテーマにした内容がよく出題されます。それは吉祥女子の教育方針が「社会に貢献する自立した女性を育成する」ことだからです。一方、男子御三家の一つ、武蔵中学の国語入試には必ず少年が主人公の物語が出題されます。それは「思春期の男子をどう育てるか」に重きを置いた学校だからです。このように各学校の国語入試にはその学校の特色が表れています。

よく中学受験では算数が重視され、「算数入試で各学校の特色が見えてくる」という言い方をする先生がいます。確かに学校によって、速さの問題を必ず出題する学校もあれば、立体図形の問題を必ず出題する学校があったりしますが、それは問題の「傾向」であって「特色」ではありません。傾向を知ることは入試対策にはなりますが、学校の考えを知ることにはならないのです。

学校選びでは、偏差値の高さが気になるものですが、偏差値といった数字だけに囚われてしまうと、入学した後に「校風が合わない」といったミスマッチが起こってしまうことがあります。学校を選ぶ際には、「この学校に通ったら、この子は楽しく通えそうだな」「成長できそうだな」という見方を持つようにしましょう。大事なのは、「お子さんにとってのベストはどこか」という視点です。そのための判断材料として、国語入試はとても有効であることをぜひ親御さんに知っていただきたいと思います。

併願パターンは1月受験の合否によって柔軟に変更を

年が明けると、いよいよ埼玉・千葉入試が始まります。東京・神奈川の子ども達にとって、1月の受験は「練習校」という位置づけになりがちですが、私は次の2パターンの受験をおすすめしています。

  • ①入試の雰囲気に慣れておくための「練習校」を1つ受験し、必ず合格を手に入れる
  • ②多少遠くても、この学校なら通わせてもいいなという第一志望群の学校を1つ受験する

「練習校」はその名の通り、入試本番前の練習として受験する学校です。大勢の子ども達が集まってテストを受ける模試には慣れていても、入試となるとまた雰囲気が違うもの。その「いつもと違う入試独特の雰囲気」に慣れておくことを目的とした入試です。また、1月受験で合格を1つ手に入れておくことで、気持ちに余裕を持たせ、2月の本番で思い切り今持っている力を出せるようにするのも狙いです。そのため、練習校は持ち偏差値よりも5〜10くらい下げておくようにします。

1月入試の目的としてもうひとつおすすめするのが、第一志望群の一つとして受験をすることです。ここで合格できれば、とりあえずひと安心。2月は思い切って憧れの学校にチャレンジしてみていいでしょう。万が一、1月の第一志望群に不合格だった場合は、もう少し安心して受けられる学校を第一志望群に加えておくなど、併願パターンを再検討してみましょう。1月の合否によって、併願パターンを柔軟に変更することも大切です。

まとめ

今回は、志望校や併願パターンを決める際のポイントについてお話ししました。 第一志望校群は12月までに固めること。そして、1月入試の結果次第で併願パターンを変えようと、親御さんが柔軟に考えておくことが重要です。

わずか12歳の子どもが挑戦する中学受験は、最後まで何が起こるか分かりません。入試期間に入って不合格が続くと、親も子も冷静ではいられなくなります。卒業生の親御さんが入試期間を振り返ると、第一声で「長かった」という感想が聞かれることが多いです。たった3~4日の入試期間でさえ長く感じるもの。上手くいかなければより一層苦しい時間を過ごすことになってしまいます。

お子さんに合った学校、通わせてもよい学校をじっくり選ぶためにも、学校説明会は4・5年生のうちに幅広く参加しておくことをおすすめします。また、文化祭はその学校の雰囲気を知るのにおすすめですが、あくまでも「ハレの日」の姿であることを忘れてはいけません。その学校の日常を知りたければ、平日の放課後に通学路や最寄り駅に行ってみて、生徒達の様子を見てみるといいと思います。

受験直前になって慌てないよう、時間に余裕があるうちに学校選びの材料を集めておいてくださいね。6年生の秋、受験対策が本格的になってくる時期に塾を休むと、通常の何倍も損をすることになってしまいますから。

※記事の内容は執筆時点のものです

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