学習 連載 中学受験のツボ[社会編]

【社会/2024入試分析】地理・歴史・公民の出題傾向を解説 ―― 分野ごとの対策方法も|中学受験のツボ[社会編]

専門家・プロ
2024年4月26日 井上佳之

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保護者向けに中学受験の4教科のツボを解説
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国語算数理科

こんにちは、井上です。

2025年度から実施される大学入試共通テストの大幅な変更を見越してか、中学入試の社会では単なる「一問一答型の問題」は減少しており、「資料を分析する問題」が増加しています

こうした中学入試の変化は、大学入試の制度が変更されるたびに繰り返されてきました。

 

これから中学入試に挑戦する子をお持ちの方のなかには、入試の傾向や対策に関心を抱いている方も多いでしょう。

そこで今回は、2024年度入試の傾向とともに、お子さんが入試で合格点を獲得するために必要な対策をお伝えします。

出題が多かったテーマ

2024年度の社会の入試は、以下のようなテーマの問題が目立ちました。

  • 自然災害(地震など)
  • ジェンダー平等(家事や男女の働き方など)
  • 国際関係(G7サミットなど)
  • 情報技術(SNS・生成型AIなど)
  • 環境問題(SDGsなど)

 

そしてこれらのテーマをもとに、以下のような出題が多く見られました。

  • 時事問題を入り口にした一問一答の問題
  • 資料の分析や、受験生の意見を求める問題

 

分野別の出題傾向と対策

社会の分野ごとの出題傾向と、それぞれの対策方法をお伝えします。

地理分野

地理分野は、知識をもとに分析・解答させる問題がこれまでも多く、2024年入試もこの傾向が見られました。

たとえば渋谷教育学園渋谷中では「Jリーグの所在都市」についての問題が出題されました。

この問題に関しては「Jリーグ」は入り口に過ぎず、ほかの問題と同じく、 “正確な知識”をもとに分析できるか? が出題意図であると考えられます。

■求められる知識

  • 都道府県の位置関係
  • 気候区
  • 地形
  • 特産物
  • 都市名

 

“使える知識”へとバージョンアップしよう

早稲田実業中では、「津波を防ぐ防潮堤を高くしよう」という意見に対する、防災上の理由からの反論を問う問題が出題されました。

その場で考えるには、なかなか難しい問題です。

 

こうした問題への対策としては、丸暗記してきた知識を「分析のために使える知識」へとバージョンアップする訓練をすることが大切です。

具体的には、演習後の振り返り学習をするときに、忘れてしまっていた知識や新しい知識を丸暗記するだけでなく、すでに覚えている知識から答えを導けたのではないか? と考え、ノートに残す習慣をつけましょう

これにより、用語の周辺知識や、ことばの本来の意味などを考えられるようになり、「すでに知っている知識をもとに知らないことを導ける力」が身につきます。

 

歴史分野

歴史分野は、一問一答型の問題が変わらず多かった印象です。

多くの受験生が取り組みやすく、知識をそのまま答案に書けば点数化しやすい分野ですが、合格に必要な基礎点となることから取りこぼしが許されない、という側面もあります。

 

そのため、歴史分野の対策としてまず重要なのは「苦手分野をなくす」ことです。

具体的には、一問一答型のテキストを使って穴をつくらないようにしたり、「テーマ史」のように横断知識をまとめた総合問題を使ったりして対策をしましょう。

政策の意味や根拠を分析する問題

近年の社会の入試問題では、歴史上の政策の意味や根拠を分析し、社会の人々にもたらした影響を答える問題も増えてきました。

たとえば白百合学園中では、「参勤交代制度が、宿場での少額貨幣の必要性を増加させた理由」が出題されています。

現代の人々と同じく、過去の人々も衣・食・住の生活を送っていた、という観点から、現代に当てはめるとどう考えられるか? を問う出題も見られますね。

このような問題に対しては、志望校の過去問だけでなく、6年生の後半からは志望校と似た出題がある学校の過去問も使い、論理的な思考力・想像力を高める練習をしておくことが大切です。

周年に関する問題

2023年度・2024年度と2年続いて、1923年に起きた関東大震災を切り口とする問題も目立ちました。

今後も出題が予想されるので、「周年(節目)の問題」もしっかりと対策しておきましょう。

<2024年>
1914年……東京駅開業、第一次世界大戦勃発から110年
1964年……東京オリンピックから60年

<2025年>
1925年……普通選挙法、治安維持法、ラジオ放送開始から100年

 

公民分野

学習期間が最も短くて済み、覚える量も少ない公民分野は、難解な用語への“アレルギー”を克服することが得点への第一歩です。

 

政治分野については、最新の数字を面倒がらず正確に覚えましょう

国際社会の単元は、地図を利用した学習を怠らないようにしましょう。時事問題で話題の国や、テキストにあまり出ていない国の位置は特に正確に覚えておきたいですね。

男子校でも「ジェンダー平等」についての出題が目立ち始めた

早稲田中や聖光学院中などの男子校では、「ジェンダー平等」のような時事問題を切り口とする出題も見られました。

以前は「男女共同参画社会」や「女性の社会参加」という視点から女子校での出題が目立ちましたが、男女関係なく考えるべき問題として扱われるようになったことが理由といえそうです。

こうした問題は、そのテーマについて考えたことがあるか? が差となって表れます。

対策としては、ニュースで話題となっている用語などを、親子の会話のなかに意識的に登場させてみることがおすすめです。

まとめ

2024年度の入試傾向をお伝えしてきましたが、中学入試の問題は年度ごとに大きく変わるものではありません

そのため年度問わず、以下のような学習を抜かりなくおこない、基本的な学習の姿勢を維持することが大切です。

  • 確認テストやカリキュラムテストを使って単元ごとの知識を蓄える
  • 時事問題で登場する重要な用語を正確に覚える(使える知識を増やす)

 

難問が出題されても、その場で考えて合理的な結論を出せるように、日々の会話のなかでお子さんをサポートすることも意識してみてくださいね。

それでは、また。

※記事の内容は執筆時点のものです

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