学習 連載 中学受験のツボ[理科編]

【理科/2024入試分析<2>】注目の問題をピックアップ! 身の回りのものに興味をもって調べてみよう|中学受験のツボ[理科編]

専門家・プロ
2024年5月02日 伊丹龍義

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保護者向けに中学受験の4教科のツボを解説。
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国語算数社会

2024年度の中学入試のなかで注目の問題をピックアップしつつ、理科の入試傾向を2回に分けて紹介します。

今回は第2回目として、開成中学などで出題された問題をもとに2024年入試の特徴を解説します。

>>1回目はこちら

「身の回りのもの」を題材とした出題が多かった

2024年の理科の入試では、「身の回りのもの」を題材にした大問が多く見られました。

出題パターンとしては、大きく次のふたつに分けられます。

  1. 普段から身の回りのものに興味をもっていると解きやすい問題
  2. 身の回りのものを起点として、通常の問題につなげる問題

 

パターン1:普段から身の回りのものに興味をもっていると解きやすい問題

中学入試では、普段から身の回りのものに興味をもって観察し、主体的に調べている子には有利な問題がよく出題されます。

 

このパターンとして2024年入試で目立ったのが、女子学院中学の「トマトとキャベツの問題」でしょう。

トマトの切断面や、キャベツの葉の構成を問う問題でしたが、普段の生活のなかで野菜に触れる機会があり、観察もしている子であれば“常識”として解けたかと思います

 

筑波大附属駒場中学では「パルスオキシメーター」についての問題が出題されました。

パルスオキシメーターは、指先につけることで酸素量(酸素ほう和度)を測る機械ですね。

「酸素ほう和度」などの用語の説明もあり、事前知識は不要な問題でしたが、パルスオキシメーターが何をするための道具かわからない受験生は苦労したかもしれません

ちなみに、この問題に続いて出題された「モズの早贄(はやにえ)」の問題は、興味があるかないかによって正答率に差が出たかと思います。

 

興味をもって調べ、自分でも試してみることが大切

2024年入試では、定番の知識から“一歩ずらした”問題も出題されました。

たとえば渋谷教育学園幕張中学では、アウトドアでは定番かつ、中学入試でも定番になりつつある「時計の針を使って方角を知る」ことに関する問題が出されました。

こちらも定番になりつつありますが、その方法によって生じる“ズレ”についても問われていましたね。

 

ちなみに、理科講師という立場をいったん離れての私の感想ですが、時計の針を使って方角がわかるというのは、素直にすごいことだと思います。

どうして方角がわかるのか?
どのようなときに正確に測れるのか?

ということは自分でも調べてみたいですし、試してみたい、とも思います。

 

受験生に関しても、ただの知識として学ぶだけではなく、興味をもって調べ、自分でも試してみる経験があると、入試において解きやすい問題が増えるでしょう

 

パターン2:身の回りのものを起点として、通常の問題につなげる問題

理科の入試では、身の回りのものを題材として取り上げたあとに、通常の問題につなげていく問題もよく見られます。

たとえば開成中学では、「ムシ図鑑」というゲームを題材とした問題が出題されました。

このゲームをしたことがない子が不利になることはなく、一般的な昆虫に関する問題でしたが、以下のような点で特徴的な問題といえるでしょう。

  • 勉強の取り組み方によっては、こうしたゲームからも大きな学びを得られる
  • 身の回りのものをもとにして、一般的な入試問題をつくれる

 

植物工場についての出題も

最近はスーパーの野菜売り場でも「植物工場産」の野菜を見かけるようになりましたが、この植物工場をもとにした問題が出題されたのが桜蔭中学です。

先ほどの「ムシ図鑑」と同じく、基本的には事前知識が不要な問題でした。とはいえ、一般的な植物の問題と、資料の読み取り、光と色の関係についての問題が出題され、「植物工場で育てる利点」を問う問題もありました。

想像力に加え、植物工場のようなことにも興味関心をもっていた子には有利な問題だったように思います。

まとめ

今回は前回に続き、2024年度の理科の入試から特徴的な問題を紹介しました。

理科の定番問題に関しては、一問一答形式での学習をしていれば点数が取れる問題も多くあります。

ただし近年の中学入試では、「身の回りのことに興味関心をもつこと」が求められる問題が増えてきているようにも感じます。

矛盾するようではありますが、テストで点数を取ることを目的としないような「考察」や「調べ学習」が点数につながる、ということですね。

 

点数に直接結びつくかわからないことにも興味をもち、調べてみる ――

本番の入試まで余裕があるこの時期にこそ、一見すると遠回りに思える学習にも時間を使ってほしいと思います。

※記事の内容は執筆時点のものです

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