学習 連載 中学受験のツボ[算数編]

【小4算数/推理算】数字ではない算数の力をみがこう|中学受験のツボ[算数編]

専門家・プロ
2024年5月10日 有賀隆夫

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保護者向けに中学受験の4教科のツボを解説
- 算数以外の3教科はこちら -

国語理科社会

髭之教育会代表の有賀です。

20年ほど前、中学入試の問題は大きく変化しました。

それまでの「ひらめきとスピード重視のテスト」から「思考力を重視したテスト」に変化したんですね。

丸暗記という楽な方法に走らない

入試問題で求められる思考力は「状況を整理し、そこに表されている事柄、法則を理解する」ことです。そして、この数年でその傾向はより強くなっています。

ですから、現在の中学入試は「覚えるだけの勉強で対応するのは難しい」と言えるでしょう。

「問題文を読解し、分析できる思考力」を身につけていく必要があります。わかりやすく言えば「筋道立てて考える力」のことです。

問題の本質をじっくりと考え、過程を重視しながら、思考力を育てていくことをおすすめします。

 

しかし、これを実行するのはなかなか難しいことです。

特に算数は「答えがはっきりとある教科」です。どうしても、「解法の暗記」に学習が偏りがちになってしまいます。

なぜなら、子供にとって「丸暗記」はもっとも簡単な方法だからです。

そこに思考は、ほんのわずかしかありません。

 

多くの子供を教えていると、

「この問題、知ってるよ」
「この問題、覚えたよ」
「この問題、見たことない」

という言葉を何度も目にします。

算数の勉強は「問題を解くための解法の暗記」だと思いこんでいる子供に見られる傾向です。

 

解法を覚えて終わりにせず「答えを導き出す過程を理解する」ことを忘れずに学習すると良いですね。

 

4年生は思考力育成のチャンス

次のふたつの理由から、4年生は「思考力」を伸ばすうえで絶好のチャンスといえます。

  • 4年生は学習内容に余裕がある
  • 一度身につけた基本は抜けない

 

4年生は学習内容に余裕がある

5年生からは学習内容も膨大な量になります。学習内容が多くなる理由は、大手進学塾の多くが「5年生の間にすべての単元を終わらせるカリキュラム」で指導しているからです。

5年生までに身につけた学力を、6年生になってからの1年間の問題演習でみがき上げることを理想としています。

ですから、5年生でじっくりと考えながら学んでいると、場合によってはカリキュラムの半分も消化できなくなってしまいます。

まだ、カリキュラムがのんびりとしている4年生だからこそ、焦って目先の内容を消化することよりも、じっくりと本質理解に力を入れることができるのです。

一度身につけた基本は抜けない

基本とは、簡単な問題という意味ではありません。算数の問題に取り組むときに「土台として必ず持ちたい力」を指します。

それは「筋道立てて考える力=思考力」です。

 

子供たちは覚えるのも早いのですが、忘れるのもあっという間です。

丸暗記型の勉強は即効性は高いのですが、すぐに抜けてしまうこともしばしばあります。しかし「筋道を立てて考える力」は、単純に解答を出すことが目的ではありません。

「なぜ、そうなるか」を考えることが目的です。

これは単純作業である、丸暗記とは違います。ですから忘れることはけっしてありません。

 

考えることが身につくと、むしろ考えないという行動をとるほうが難しいですね。

4年生のうちに「問題を解くときに考えるのはあたりまえ」になっておくと、高学年になるにつれて算数が得意になるでしょう。

 

思考力の訓練に「推理算」はベストな教材

思考力の訓練に推理算は非常に適しています。特に、計算が出てこない推理算を僕は利用します。

算数があまり得意ではない子供は、数字が出てくるだけでイヤな顔をする子もいます。そんなときに、なぞなぞやクイズのように見える推理算は、子供たちも喜んで解いてくれるからです。

 

たとえばこんな問題です。

【問題】
A、B、C、Dの4人でかけっこをしました。
次の発言から4人の順位をそれぞれ答えてください。

A「僕は3位じゃなかったよ」
B「私は4位にはならなかった」
C「自分は3位ではなく、Aの次にゴールした」

 

算数というよりも国語の問題に近いですね。

 

表や図で整理するのが一般的な解法です。

まず、問題にある3人の発言から、次のことがわかります。

Aの発言
→ Aは3位ではない

Bの発言
→ Bは4位ではない

Cの発言
→ Cは3位ではない

 

これらについて、次のような表をつくって、情報を書きこんでいきます。

さらに、Cの発言には、CはAの次にゴールしたとあります。A → Cという順ですね。

Aの後にはCがいるので、Aが4位ということはありえませんね

また、Cの前にはAがいるので、Cが1位ということもありえません

この情報を表に書きこみます。

だいぶ埋まってきました。

ここからわかることは、

  • Aは1位か2位
  • Bは1位か2位か3位
  • Cは2位か4位

ということですね。

Dについては、誰も何も言っていないので、まったく情報がありません。

 

ここからが推理算のおもしろいところです。

 

上で見たように、Cの発言から、A → Cという順です。

ということは、

Cが2位ならAは1位
または
Cが4位ならAは3位

という、ふたつの可能性が考えられるわけです。

ところが、Aの発言から、Aは3位ではないことがわかっています。ですから、Cが4位でAが3位、ということはありえません。

したがって、Aが1位で、Cが2位だと確定します。

 

表のうち、確定したところには、◯をつけましょう。すると、4位でないことがわかっているBが、さらに1位でも2位でもないとわかります。

ですから、消去法でBは3位と確定します。

この結果、残るDが4位だと確定します。

解答

A …… 1位
B …… 3位
C …… 2位
D …… 4位

 

この問題のポイントは、×になる場所を書きこむことです。

ありえない部分に×を書きこんでいって、可能性をつぶしていく。その結果、確定した部分に⚪︎を書きこんでいきます。

これが推理算の考え方です。

好きに解かせるのも、考える訓練のひとつ

表や図を書かせる訓練としてなら、書き方を教えましょう。

しかし目的が「自分で工夫して解く」ことにあるならば、子供たちの好きにさせていいと思います

 

大人が思っている以上に、子供たちは「こう解かねばならない」というパターンの呪縛(じゅばく)にしばられていることが多いようです。

たまには好きに解かせてみましょう。真面目な子ほど、推理算の単元は自由にやらせてみるのも、考える訓練の方法のひとつですね。

 

ぜひ、余裕のある4年生のうちに「考える習慣づけ」を意識してみてください。

「考えることは自由」であることを子供に教える。

これも大切なことのひとつです。

※記事の内容は執筆時点のものです

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