連載 三田国際学園学園長 大橋清貫の「選びたい教育」

時代が要請する力を身に付けるために|三田国際学園学園長 大橋清貫の「選びたい教育」(19)

専門家・プロ
2018年7月06日 大橋清貫

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前回のコラムでは、「学校説明会等で次々に出てくる新しい言葉は、新しい教育の軸があって初めて意味があるのだから、その視点で学校を見ていくとよい」そんな内容でした。

授業だけがアクティブ・ラーニングであれば良いのか

新しい言葉は確かにどんどん登場しています。前回のコラムでも教育関係者でも意味の統一性はなかなかとれていないと書かせてもらいました。グローバル教育、21世紀型教育、アクティブ・ラーニング(AL)などは特にその傾向が強いと思います。ALを授業で取り入れることはもう待ったなしで、従来型のパッシブ・ラーニングだけでは時代が要請する思考力を生徒に身に付けさせるには十分ではないと誰もがわかっています。しかし、「ではどうするか?」の回答は、各校で程度も内容もまちまちなのが実態だと思います。それはなぜでしょうか。私は授業だけがALであっても完成には遠いからだと考えています。そこには学校を挙げての大きな改革が必要だからだと考えています。

「主体的・対話的で深い学び」の実現を担保するもの

以前にも書かせて頂きましたが、文部科学省は新学習指導要領の方向性が「主体的・対話的で深い学びの視点から学習過程を改善」していくとされています。それを達成するために、「アクティブ・ラーニング」という言葉を使うか使わないかは別としても、「何を学ぶか」だけではなく「どのように学ぶか」という視点に言及しています。

そしてそのために具体的に何をしていくかについては学校の判断ということになっています。マニュアルも指導手引書もありません。各校の悩みもここにあります。おそらく熱心な先生は初等教育でも、中等教育でも、高等教育でも「対話的で深い学び」を実現する授業を既にされていると思います。

問題は何人の先生が実施されているか、その割合ということになります。生徒・学生から見れば先生によってスタイルが異なることは、その都度学びの形式が変わるので大変です。同様に授業で対話型のALが達成されていたとしても定期試験になるとやはり問題は従来型に、さらに成績評価になると、従来型試験の結果が評価対象の中心ということであっては「主体的・対話的で深い学び」の意義が急速に薄らいでしまうかもしれません。

学校の中で授業から評価に至るまで「主体的・対話的で深い学び」の実現が担保されなければならないと考えます。そこに至るまでは学校の中の意思統一、研修などでの教員の深い理解、校長・学長の果敢なリーダーシップが必要だと個人的には考えています。

学校説明会に学校内の意思統一が見えるか

私自身、各学校の行う学校説明会にいくつか伺ったことがあります。どの学校も大学も、校長先生や学長先生が自信を持ってビジョンを語る様子は、実に頼もしいです。特に、胸躍るようなわくわくするお話しもありました。私自身、最も気になって拝見しているのはその後に続く先生方に、リーダーに続いていく姿を確認できるかどうかです。もしそんな様子を拝見できたらその学校・大学は本物の気がします。各校が切磋琢磨して保護者の方や受験生の期待に応えていくことは素晴らしいと思っています。

次回はさらに将来の様々な進路選択に向けてどんな学びがよいのか、ご一緒に考えて頂けたらと思っています。

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※記事の内容は執筆時点のものです

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