連載 三田国際学園学園長 大橋清貫の「選びたい教育」

変化する入試問題と教育の転換|三田国際学園学園長 大橋清貫の「選びたい教育」(12)

専門家・プロ
2018年2月13日 大橋清貫

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前回は学校が独自の教育をすることが可能になってきたということを書かせてもらいました。その背景には、次期学習指導要領が「新しい時代に必要となる資質・能力」を学校が選択し、「それを達成するためにアクティブ・ラーニングでの学びで実現していく」ことを掲げていることが影響しており、その大きな方向性の実現は各学校の判断になっていくこと、その結果、学校ごとに学びのスタイルは大きく異なっていくことになるとも書かせてもらいました。

つまり、教科書は同じでもアプローチが違えば、結果として生徒個々の学びも、その延長としての成長も大きく異なっていくということです。

教育をとりまくうねり

従来のようにほぼ同じ偏差値だから、ほぼ同じ大学実績だから教育の内容は同じだろうという考えは成り立たなくなっていくと思います。高校、特に進学校は目指す大学の合格に必要とされる学力について熟知しています。その学力に辿り着く指導法は得意中の得意です。

そんな事情でほぼ同一レベルの進学校の指導内容はどうしても近いものになっていきます。「教え子を目標大学に」という思いはとても強いのです。特に結果を出したいというミッション意識が高い先生はそういった傾向にあります。悪いことではありません。むしろそのプロ意識は立派だと思っています。

しかし、少し事情が変わってきています。その動きはなだらかに見えますが、実は大きなうねりになっていくと思います。大学も大きく変わろうとしているからです。

変化する大学入試問題

「ルネサンス期にヨーロッパに大きな社会的変革をもたらした『火薬・羅針盤・活版印刷術』は三大発明と呼ばれている。なぜ三大発明と呼ばれているかを簡単に考察した後,2050 年頃までに期待する3つの技術革新を挙げ,それらの相乗効果がもたらす社会的変革を説明せよ。」

2017年度の東京大学の推薦入試の問題です。600~800字でという指定です。今後、このような入試問題は各大学の個別入試の中で増えていくはずです。それが時代の流れだと考えます。社会が求める人材の条件が大きく変わってきたからです。

出典:平成 29 年度 東京大学工学部推薦入試 小論文課題
http://www.u-tokyo.ac.jp/stu03/e01_29.html

社会が求めるスキルを身につける教育への転換

2016年に世界経済フォーラムが発表した「Future of Jobs」の中で、2020年に求められる「Top10 Skills」の上位の3つは【1】Complex Problem Solving(問題解決力)、【2】Critical Thinking(思考力)、【3】Creativity(創造性)でした。これらは、教科書内容を理解して覚え、唯一の正解を求めることが教育の中心であったこれまでの学習だけでは到底身につきません。

これからは、今後社会で求められる能力を学習者が自己のスキルとして獲得していくことができるように、日本の教育が変わっていく時代です。大学はこのような学習者に支持される大学になるために舵を切り始めています。受験生に求める力も従来のものだけではなくなってきています。

今、教育界では時代の動きを先進的に取り入れ、新しい価値観に基づく学校が登場してきています。それは戻ることのできない流れです。

次回はこの流れについてもう少し詳しく考えていきたいと思います。

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※記事の内容は執筆時点のものです

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