学習 連載 中学受験のツボ[理科編]

【小6理科/物理】凸レンズの作図は「3つのルール」を意識して取り組もう|中学受験のツボ[理科編]

専門家・プロ
2023年9月14日 倉石圭悟

0
保護者向けに中学受験の4教科のツボを解説。
- 理科以外の3教科はこちら -

国語算数社会

こんにちは、倉石です。

凸(とつ)レンズ」が苦手な受験生は少なくありません。

凸レンズだけでなく、物理の分野が苦手な受験生の多くが、そもそも基本的な事柄から理解できていません。

 

今回は、凸レンズの基本である「作図の仕方」について説明していきます。

作図さえできれば、どこに、どんな像ができるのかも求めることができますよ。

凸レンズの作図の「3つのルール」

凸レンズの作図には、凸レンズの3つの性質を使います。

凸レンズの3つの性質

① レンズの中央を通る光は直進する
② 光軸に平行に入った光は焦点を通る
③ 焦点を通った光は光軸に平行に進む

 

この「3つのルール」に従って光の道筋を作図していけば、どこに、どんな像ができるかわかります。

物体を置く場所によって、できる像の種類や大きさ、向きも異なります。

ここでポイントとなるのが「焦点距離」です。

焦点距離

焦点距離とは、凸レンズから焦点までの距離のこと。

これを2倍したのが「焦点距離の2倍の位置」となります。


注目したいのは、焦点距離や、焦点距離の2倍の位置と比べてどこに物体を置くか、ということ。

これによって、できる像が異なるのです。

作図の仕方

それでは、像の種類ごとに作図の仕方を説明します。

  • 実像ができるとき
  • 虚像ができるとき

 

実像ができるとき

まず、焦点の外側に物体を置いてみましょう。

このとき、2通りの場所が考えられます。

(1)レンズから見て、焦点距離の2倍より遠い
(2)レンズから見て、焦点距離の2倍より近い

それぞれの場合について、作図しながら見ていきます。

(1)焦点距離の2倍より遠くに置く場合

まずは、焦点距離の2倍よりも遠くに物体を置いた場合について考えましょう。レンズから離れた位置になりますね。

先ほどの3つの性質に従って光の道筋を書いていくと、次のようになります。

凸レンズの3つの性質

① レンズの中央を通る光は直進する
② 光軸に平行に入った光は焦点を通る
③ 焦点を通った光は光軸に平行に進む

 

上記の図のように、レンズより右側で、焦点距離の2倍よりもレンズに近い位置に光が集まります

したがって、この場所に実像ができます。

この場所にスクリーンを置くと、物体の像を見ることができます。

 

また、この実像は上下が逆さまになっていますね(この図からはわかりませんが、左右も逆さまになっています)。

このように、上下左右が逆さまになっている実像を「倒立実像(とうりつじつぞう)」といいます。

 

最後に、像の大きさに注目しましょう。

実際の物体よりも小さくなっているのがわかりますね。

 

【まとめ】

焦点距離の2倍よりも遠い位置に物体を置くと……

  • 焦点距離の2倍よりも近い位置に
  • 実際の物体よりも小さい
  • 倒立実像

ができる。

 

上記のことを、いちいち暗記する必要はありません。

自分で簡単な図を描いて求められるようにすれば良いでしょう。

 

(2)焦点距離の2倍より近くに置く場合

次に、焦点距離の2倍の位置と焦点の間に物体を置いた場合について考えます。

今度は、レンズに近い位置になりますね。

先ほどと同じように光の道筋を書くと、次のようになります。

この図に、少し違和感を覚えるかもしれません。「③」の光が凸レンズを通っていませんよね。

実はこれ、問題ありません。

たしかに「③」の道筋を通る光は存在しません。しかし「像がどこにできるか」を考える際には、仮想的にレンズを伸ばして考えても問題がないのです。

 

では先ほどと同じように、像の種類・位置・大きさを見ていきましょう。

実際に光が集まって像ができていて、上下左右が反対になっているので「倒立実像」ということになります。

像の位置は、焦点距離の2倍よりも遠くなっています

像の大きさは、実際の物体よりも大きいですね。

 

【まとめ】

焦点距離の2倍よりも近い位置と焦点距離の間に物体を置くと……

  • 焦点距離の2倍よりも遠い位置に
  • 実際の物体よりも大きい
  • 倒立実像

ができる。

 

虚像ができるとき

今度は、焦点の内側に物体を置いてみましょう。

今度も3つのルールに従って、光の道筋を書いていきます。

凸レンズの3つの性質

① レンズの中央を通る光は直進する
② 光軸に平行に入った光は焦点を通る
③ 焦点を通った光は光軸に平行に進む

 

すると「③」の光が描けません。焦点よりも内側に物体がある場合には、焦点を通った光は存在しないからです。

ですから「①」と「②」の光のみを描くと、次のようになります。

このふたつの光は、進むにつれてどんどん離れていってしまいます。

光が交わらない、つまり“実像ができない”のです。

 

では像ができないのかというと、そうではありません。

この「①」「②」の光を逆向きに伸ばしていくと、下の図のように1点で集まります。

これをレンズの右側からのぞくと、人間の目には、この交わった点から光が出ているように見えます。つまり、その交わった点の位置に物体があるように見えるのです。

このように、実際に光が集まってはいないものの、あたかもそこから光が出ているかのように見える像のことを「虚像(きょぞう)」といいます。

 

そしてこの像は、上下(左右)の向きはそのままなので「正立虚像(せいりつきょぞう)」といいます。

像の大きさは実際の物体よりも大きく、像の位置は物体と同じ側です。

ちなみに虚像は、虫眼鏡をのぞいたときに見えているものです。虫眼鏡も凸レンズでできているのですね。

 

【まとめ】

焦点距離の内側に物体を置くと……

  • 物体と同じ側で、焦点から見て物体の外側に
  • 実際の物体よりも大きい
  • 正立虚像

ができる。

 

まとめ

今回は、凸レンズの作図の仕方を説明しました。

まずは、紹介した図を自力で描けるようになることが大切です。そうすることで、どこに、どのような像ができるのかを求めることができます。

凸レンズが苦手な子に対しては、まずは基本に立ち返り、作図の仕方から復習するように声をかけてあげましょう。

※記事の内容は執筆時点のものです

0
倉石圭悟

倉石圭悟

  • 専門家・プロ
  • この記事の著者

Webメディア「ホンネで中学受験」スタッフ、個別指導塾Growy講師。大手集団塾、大手個別指導塾、家庭教師などで小学生から高校生までの指導を経験。「生徒一人一人の幸せのために」をモットーに、算数・理科を中心に指導をしている。何度スベっても動じない鋼の心臓の持ち主。趣味は野球、作詞作曲、料理