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中学受験いまむかし・変わったところと変わらないところ|低学年のための中学受験レッスン#36

専門家・プロ
2024年3月25日 宮本毅

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私が中学受験をしたのは1982年2月のこと。

前日に東京に大雪が降り、入試前日の不安からナーバスになっていた私は母親とケンカしてプチ家出をしたことを覚えています。

入試当日の朝は仲直りした母親と共に雪の残る中、電車に乗って入試会場まで行きました。

当時は塾の先生が校門のところに待ち構えているというようなことはなく、淡々と会場に入りました。

試験問題のことは今でもよく覚えています。

特に「きつねそばに使われる材料や調味料の原料のうち、大部分を輸入に頼っているものを3つ挙げ、その主な輸入元の国名を答えなさい」という問題に大変苦戦し、「油あげ、秋田(国名ですらない笑)」と書いたことが強烈に記憶に残っています。

すでに40年以上前の話なわけですが、現在の中学受験にも似たような話は転がっていそうです。

今回は、中学受験の今と昔を比べるなかで、改めて中学受験で問われているもの、求められているものを考えていきたいと思います。

中学受験は本当に「変わった」のか

中学受験は一昔前と比べ「変わった」とする論調が、世の中的には主流です。

しかし、相変わらず高偏差値の学校の人気が高いですし、相変わらず子ども達は深夜まで勉強しています。

これだけ「価値観の多様化」が叫ばれている中で、なんだか中学受験業界だけ取り残されている感があります。

難易度が大きく変化した学校もある

そうはいっても「全く変わらない」というわけでもありません。

お父さんお母さん世代からすると「え? この学校が?」と思えるような学校の偏差値が爆上がりしていたりするなんてこともあります。

偏差値が爆上がりする理由は主に三つあります。

ひとつは「共学化」

昨今は共学人気が非常に高まっているので、女子校が共学化するだけで、志願者数が増えます。

順心女子学園→広尾学園、戸板女子→三田国際学園、嘉悦女子→かえつ有明といったところがこれにあたりますね。

広尾学園なんてもはやトップ校の一角です。

午後入試の導入も、志願者数増加の一因となります。

私の記憶が正しければ、最初の午後入試導入校は高輪中で、2002年に「算数午後入試」を導入したのがその走りです。

以来、午後入試を導入する学校は年々増加し、現在は首都圏の約150校が午後入試を導入しています。

これにより併願作戦のバリエーションが増え、一校も合格しない「全落ち」を回避できるケースも増えました。

一方、午後入試を導入する学校は難化する傾向が強くなっています。

東京農大第一東京都市大恵泉女学園といった学校は一昔前と比べると本当に合格しにくくなってしまいました。

偏差値が爆上がりする三つ目の理由は「系列校連携協定」です。

系列校連携とは、大学や短大の関連中学や高校と、大学が連携することです。

「附属校」と混同されがちですが、原則として、附属校は大学への無試験進学が認められているのに対し、「系列校連携」は推薦枠のみを有し、無試験進学は認められていない学校を指します。

たとえば2019年に日本大学と系列校連携協定を結び日出学園から名称変更した目黒日大や、明治大学と協定を結んで2026年から明治大学付属世田谷となる予定の日本学園などがこれにあたります。

系列大学への推薦入学への可能性を高めつつ、他大学の受験も現実的な進路として考えられるわけで、大学と「系列校連携協定」を結んだ学校は、軒並み倍率を上げています。

入試科目の多様化

入試科目においても時代による変化は進んでいます。

親世代の頃の入試科目は「算数・国語・理科・社会」の4科目入試か、「算数・国語」のみの2科目入試が主流でしたが、いまや「算数1科目入試」や「国語1科目入試」、「算数・国語・理科・社会」の4科目の中から2科目を選択できる入試、「英語」を選択できる入試など、その種類は多岐にわたります。

また2013年から「思考力入試」を導入している聖学院中では、レゴブロックを使う「ものづくり思考力入試」が有名です。

受験者達はまず「最高の食事」をレゴブロックで表現し、その後作品を作文で説明したり、資料を参考に解答するという入試がおこなわれました。

宝仙理数インターでは「読書プレゼン入試」という入試が実施され話題となりました。

これは事前に提出した調査書を基に自分の好きな本について試験官にアピールするというものです。

宝仙理数インターではこれ以外にも多種多様なプレゼン入試をおこなっています。

一方で私立中学校の側も迷走してしまっているケースもあります。

たとえば藤村女子中で2021年からおこなわれていた「ナゾ解き入試」は、謎解きイベントなどを展開する企業SCRAPの協力により実現し話題を呼びましたが、残念ながら廃止されてしまいました。

3年間やってみて中学入試の選抜方法としては適切ではないという判断が下ったのでしょう。

たしかに「ナゾ解き」は思考力を問うツールとしては決して不適切なわけではないとは思いますが、それなら別にイベント的にしなくとも、たとえばGoogleやAppleの入社試験のようなテストをペーパーでおこなえば事足りるでしょう。

変わったのは受ける側?

入試制度の変化や選抜方法の多様化、難易度の変遷など、中学受験の今と昔で変わったことは確かにあります。

しかし、冒頭にも述べたように、「読解力」や「思考力」をきちんと備えている生徒が欲しいという私立中学側の思惑は大きく変わっていないように感じます。

私が受験した年の第一志望の算数で出題された問題は、いまだに中学受験用テキストに載っていますし、冒頭で紹介したきつねそばの問題も多くの問題集に採用されています。

最近は思考力を問う問題のほかに、記述問題が増えたという話もよく言われますが、武蔵中の国語は、私が受験した当時からほぼ記述問題でした。

もちろん、学校によってさまざまではありますが、中学受験の本質は実は変わっていないとみるべきでしょう。

では何が一体変わったのか。

私は受験生の側・受験生の保護者の側こそが「変質した」と考えています。

たとえば、子ども達の読解力。

これは多くの記事で何度も書かせていただきましたが、現代の子たちは本当に読解力が低下しているように感じます。

上位層はさほど変化はないように感じますが、中堅層や下位層の読解力は著しく低下しているように思います。

語彙力が低いため自分の考えを表現するのも苦手なうえ、たとえばこちらがある出来事に関する意見を求めても、こちらの質問の意図をくみ取ることができずトンチンカンな答えをしてしまうということもよく見られます。

小学校で「思考力を養う教育」をするのはいいのですが、思考力の礎となる読解力や知識力といった基礎学力をないがしろにした結果、なんだか中途半端な子がたくさん産みだされてしまっているように感じます。

まとめ

周りの情報に踊らされず、入りたいと思った私立中学を信じて、地に足の着いた学習を進めていきましょう。

時代は変われど、本当にいいものは変わらないものですから。

 

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※記事の内容は執筆時点のものです

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