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倍数と約数の教え方(5)倍数、公倍数の実践問題|ママのための受験算数の教え方プチ講座

2018年4月04日 小林美代子

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倍数と約数の教え方(1)(2)において、倍数と公倍数についての基本的な考え方を紹介しました。今回はそれらをベースとした実践問題にチャレンジしてもらい、どのように基本事項が使われ、さらにどんな力が要求されるのかを知ってもらいたいと思います。

倍数、公倍数の実践問題

さっそく次の実践問題をお子さんに解いてもらいましょう。

■問題(難)

3を引くと4の倍数になり、2をたすと7の倍数となるような整数について、次の問に答よ。

(1)このような整数のうち、2けたの数をすべて求めよ。
(2)このような整数のうち、3けたの数は何個あるか。

どうでしょうか、お子さんは無事答えを出すことができましたか?

まずは問題文「2をたすと7の倍数になり、3を引くと4の倍数となるような整数」の通りに式をつくってみます。

求める整数を☐とすると、

☐-3=4×○、 ☐+2=7×△  (○、△:整数)

この式をそれぞれ変形すると、

☐=4×○+3、 ☐=7×△-2

となり、ここまでは大丈夫だと思います。

この先この2式を同時に満たす整数□を見つけ出すのには、少し実践力が必要になると思いますが、間違いなく「倍数と約数の教え方(1)(2)」の内容で解ける問題です。


では、倍数、公倍数の基本事項をお子さんに再確認させながら、実践力を養うために、次の2つの問題(問題1、問題2)を解きながら、力つけていきましょう。まずは問題1からです。

■問題1(基礎)

4の倍数でも7の倍数でもある2けたの整数をすべて求めよ。

解説

この問題は4の倍数(4×○の形)であり、7の倍数(7×△の形)でもある整数である、つまり7と4の公倍数の問題です。

7と4の公倍数とは、最小公倍数28の倍数(28×□の形)です。

そのうち2けたの整数は

28×1=28、 28×2=56、 28×3=84より

答えは28、56、84である。

ここで倍数と公倍数についての仕組みを考えてみましょう。仕組みを考えるために、それぞれの倍数を書き並べて、見比べてみます。

4の倍数は4ずつ増え、7の倍数は7ずつ増えので、「4の倍数でも7の倍数でもある数」は4と7の最小公倍数28ずつ増える。つまり28の倍数であることが目で確認できます。

次に問題2です。

■問題2(標準)

50から100までの整数のうち、2をたすと7の倍数となる整数の個数を求めよ。

(ここまででつまずいてしまう場合は「倍数と約数の教え方(1)」の倍数の個数を求める問題の解き方を確認しましょう)

解説

まず、求める整数(2をたすと7の倍数となる整数)を☐とします。

☐+2=7×△  (△は整数)
     ☐=7×△-2

そして、ここからが実践力を要します。何をするのかというと、具体的に書き出すのです。(簡単でしょ!)この具体的に書き出してみる方法は、意外と受験算数に強くなる方法なのです。

さっそく、

54、61、68、…、96

また、これを「7×△-2の形」で表すことによって、仕組みが理解できます。

また、△は順番を表していることがわかります。そして求める数は8番目から14番目の数である。

さらに「7×△-2」を1番目から書き出してみると、さらに理解しやすくなります。

1番目から7番目までがいらないので、

答えは14-7=7(個)である。


では、再度本題を解いてみましょう。

■問題(難)

3を引くと4の倍数になり、2をたすと7の倍数となるような整数について、次の問に答よ。

(1)このような整数のうち、2けたの数をすべて求めよ。
(2)このような整数のうち、3けたの数は何個あるか。

解説

求める整数を☐とすると、2つの条件は、

☐-3=4×○、 ☐+2=7×△ (○、△:整数)

と表せます。この2式をそれぞれ変形すると、

☐=4×○+3、 ☐=7×△-2

これらを具体的に書き出し、書き並べ、見比べると、

よって、求める整数□は次々に28を加えたものであることがわかります。

つまり、求める整数は

□=28×△+19 (△は整数)

と表すことができます。

■問(1)

2けたの整数を具体的に書き出すと、

19、 19+28=47、 47+28=75 よって、

答えは19、47、75である。

■問(2)

3けたの整数は

103、131、…999

であり、これを「28×△+19の形」で表すと、

である。

これは、2番目までがいらないと考えられるので、

3けたの整数の個数は

35-2=33個

答えは33個である。

まとめ ――具体的に書き出す、書き並べる、見比べる

算数(数学)の実践力を養うには、基本事項をしっかりと身に付けたうえでまずは、

  • 具体的に書き出す
  • 書き並べる
  • 見比べる

をやるといいです。簡単なことなのですが、意外とこの3つのことを試さずに「格好の良い式」ばかり探す子は多いです。

  • 具体的に書き出して、その数の仕組みに慣れる
  • きれいに書き並べて、その規則性(構造)を考える
  • 見比べて、その構造を深く理解する

ことが大切です。

最後に理解した構造を、式で表現していくことは、力のいる作業だと思います。

今回の場合、「求める整数□は次々に28を加えたものであることがわかる。求める整数は□=28×△+19(△は整数)と表すことができる」という部分が、最後の式での表現にあたります。

でも、基本的な行動は「具体的に書き出す、書き並べる、見比べる」ととても簡単なものなので、お子さんが問題に悩んでいる場合は、「具体的に書いてみたら?」「きれいに並べて書いてみたらどう?」「書き並べたものを見比べて見てごらん」と声をかけてあげるだけでも、実践力を養えると思います。そして、この「具体的に書き出す、書き並べる、見比べる」は整数を求める問題にとても有効です。


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※記事の内容は執筆時点のものです

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