中学受験ノウハウ 連載 発達障害&グレーゾーンの中学受験

#13 私立中学に入学したあとの子供の様子はどうですか? ―― 親子で乗り越えた、発達障害&グレーゾーンの中学受験

2019年9月17日 市川 いずみ

0

発達障害&グレーゾーンの息子と中学受験に挑戦し、志望校合格を果たした市川家の中学受験録。どのように中学受験を乗り越えたのか、親子奮闘の軌跡をQ&A形式で聞きます。

#0はじめまして ─── 著者(市川いずみ)の自己紹介

Question #13

私立中学に入学したあとの子供の様子はどうですか?

Answer #13

穏やかになり、自覚をもつようになりましたが、発達障害の特性で苦労していることもあります

小学校のときは、「イヤなことから逃げてしまう」「気持ちの切り替えができない」といった息子の特性に苦労しました。6年生のときには、塾や小学校に行きたがらなかったこともあります。そして、この特性は変わるものではありません。私立中学に進学したからといって安心できるわけではなく、「息子が同じようなことを繰り返したらどうしよう」と心配していました。

しかし中学2年生になった息子は、楽しそうに学校に通っていて、今のところ思ったような心配はありません。ただ、発達障害の特性で苦労している部分も少なからずあるのは事実です。

私立中学に進学したあとの息子の様子

念願の第一志望校に進学した息子は、小学生のときにはなかった穏やかさが出てくるようになりました。受験期間中は、妹へのちょっかい、やる気がない、部屋へ逃げる、それでも受験は辞めない……といった葛藤を繰り返していましたが、中学受験を乗り越えたことで、いまでは心に余裕ができたようです。

学校を楽しんでいる一方で、発達障害の特性に苦労している姿も

私立中学に進学すると、勉強面や生活面、友人関係など、未知の世界が待っています。そのため、親として心配事がたくさんありました。しかし、勉強で苦労しているものの、息子は学校生活を楽しみ、友人とも幅広く交流をしています。

一方で、発達障害の特性で苦労している様子も次第に見えてくるようになりました。自覚が出てきたなと感じる反面、息子の場合は「時間の感覚をもつこと」と「気持ちの切り替え」が相変わらず苦手です。「いま」を優先してしまうことも変わりません。まだまだ子供の部分がある一方で、成長期に入っている部分もあり、心のバランスが難しい時期になってきました。

学校について

息子の学校の様子について、先生からは、「友達とのトラブルはありませんが、精神年齢が幼い部分が見受けられます。また、空気が読めていないところや、取り組みが遅いこともあります」という話がありました。一方で、周囲を少し気にするようになり、自分の立ち位置をつくっていることを、成長している点として挙げられていました。

そんな息子ですが、とにかく学校が楽しいようです。部活の友達以外にも、クラスを越えて友達がたくさんできています。自由な校風で窮屈ではなく、のびのびとしている雰囲気も、息子にあっているようです。

勉強について

息子は、字を書くことが苦手です。しかし、定期テストを何度か繰り返し、板書の大切さがわかってからは、ようやくメモをとるようになりました。

また、時間の感覚に乏しいため、計画を立てて行動できません。そのため試験前になると、はやい時期からわたしが声掛けをし、試験勉強をするように促しています。しかし、状況を甘く見てしまい、直前にならないとやる気もでないため、試験の結果が返ってくると息子は後悔しています。

苦手なことについて

息子は、今でも時間の管理が苦手です。毎朝の支度もギリギリで余裕はありませんが、学校に遅刻しないように時間を気にしている様子は見えるようになりました。

また、提出物を出すことも相変わらず得意ではありません。小学生のときよりは意識するようになりましたが、時間内に出せない提出物は居残りをしたりしているようです。また、息子が通っている中学校は、授業に高校の内容を取り入れているため、教科書に沿って進みません。そのためプリントが多いのですが、息子は管理ができずにプリントがバラバラ。試験前に苦労して集めていますが、紛失していることもあります。

私立中学を選んでよかったこと

現在、息子は中学2年生ですが、公立中学に進学していれば高校受験に向かって勉強し始める時期です。しかし、息子は私立中高一貫校に通っているため、受験勉強に追われません。中学3年間の時間をまとまって使えるのは、わが家からすると精神的なゆとりが生まれ、貴重なことです。

ちなみに、学校の教育方針によるかと思いますが、私立中高一貫校のカリキュラムは、中学2年生までに中学の学習範囲を終え、高校の内容に入っていきます。また、海外研修や学校独自のプログラム、文化祭や体育祭、部活など、勉強以外にも活発にイベントがあり、学校施設も充実しています。

あえて失敗させる余裕もできた

息子は第一志望の学校に進学できましたが、ある程度自由な校風で、やはり息子に合っていたと感じています。わたし自身も、保護者同士の交流を楽しみにし、お互いに悩みを話したりするなど、とても助けられています。

保護者会では、「子供を自立させるためには、親が関わらないこと」「子供自身に気づかせるために、あえて失敗させましょう」といったアドバイスを先生から受けました。さすが、“思春期の子供に関わるプロ”といった先生たちです。

ちなみに、あるときの定期テストで、「自分で考えてやるから!何も言わなくていいから!」と息子が言うので、自立のためにも任せてみることにしました。息子の中学受験で散々失敗してきたわたしにとって、もう怖いものはありません。「自分の甘さに気づいてくれればいいな」という思いから、息子の勉強に関わりませんでした。

結果は、ボロボロの大失敗。息子は、「やっぱり勉強はやらないとマズいね」とボソリ。「反省するようになったのかな」とそのときは思いましたが、考えてみるとこれまでも何度か失敗を繰り返しています。やはり「今」しか見えない特性があるため、親としてどこまで関わってよいか難しいところです。しかし、失敗を繰り返しつつも、自分でなんとかしていく時間がもてるというのは、高校受験がないからこそできることだと思っています。

また、親として、息子の行動に正直イライラしてしまうこともありますが、今では中学受験のような親子バトルもなく、話し合える関係になっています。激動の中学受験を乗り越えたことで発達障害の特性がわかり、特性に対して冷静に向き合えるようになったからだと思います。

周囲のサポートにも助けられている

中学校の先生には、息子の知能検査の数値結果を渡しています。担任の先生が変わりましたが、引継ぎがされていたため、スムーズに理解してもらえました。

入学当初は発達障害の薬を服用していましたが、「もう飲まなくても大丈夫だから」と息子が言うので、中止することにしました。病院の先生にも話し、何か困ったことがあったときに相談することになりました。

また、息子の学校にはスクールカウンセラー制度があります。もし息子のことで不安なことが出てきたときは、相談しようかなと思っています。

「ふつうの生活」を送れていることが何よりも嬉しい

自分の居場所を確保しようと、友達との約束を必死に守ろうとする息子の姿。そして、毎日を楽しんでいる息子の姿――。わが家にとって、「ふつうの生活」を送れていることが本当に嬉しいことです。一方で、まだまだ課題はたくさんあります。「いつか状況が変わってしまうかも……」という不安も、常に抱えています。

中学・高校の6年間は、子供にとって難しい時期ですが、まずは自立できる子になるように、親としてこれまで以上に関わり方を考えなければいけないなと思っています。

※記事の内容は個人の経験談です


■「親子で乗り越えた、発達障害&グレーゾーンの中学受験」バックナンバー

※記事の内容は執筆時点のものです

0