中学受験ノウハウ 連載 発達障害&グレーゾーンの中学受験

#7 子供の勉強のやる気がでないときに、どうやって勉強のモチベーションを上げていたんですか? ―― 親子で乗り越えた、発達障害&グレーゾーンの中学受験

2019年7月17日 市川 いずみ

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発達障害&グレーゾーンの息子と中学受験に挑戦し、志望校合格を果たした市川家の中学受験録。どのように中学受験を乗り越えたのか、親子奮闘の軌跡をQ&A形式で聞きます。

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Question #7

子供の勉強のやる気がでないときに、どうやって勉強のモチベーションを上げていたんですか?

Answer #7

親の負担が増えることは覚悟のうえで、「勉強を始めるきっかけ」をつくってあげました

「勉強する気が起きない」に悩まされる日々

「やらなきゃいけないことがたくさんある」と頭でわかっていても、どうしても気分がのらないことは誰にでもあります。

しかし、わが家の中学受験は、親子で立ち止まっている余裕や、息子がやる気がないからといってダラダラ過ごす時間はほとんどありませんでした。

中学受験は、まだまだ遊びたい盛りの小学生がまわりの誘惑を振り切り、小学校の授業より内容が濃くスピードがはやい塾の授業を3年近くも続けます。学年が上がるにつれ、テストや公開模試の回数も増え、子供にプレッシャーもかかってきます。

そんななかでも、計画を立ててやるべきことを把握し、自分から行動できる子もいます。しかし、わたしの息子は発達障害の特性もあり、自発的に動くことを特に苦手としていました。

【息子が苦手としていたこと】
・計画を立てられない
・「今」しか見えず、先のことを考えられない
・気分で動くので、意図をもって行動できない
・切り替えができない

口うるさく言っても息子は動かなかった

「勉強する気が起きない」と息子はよく言っていました。わたしが口うるさく言っても焦らず、「一緒にやろう」と声をかけても現実逃避してしまうんです。

また、何に対しても取り掛かるのが遅く、毎日の勉強がまったく進みません。「やろうかな」「やるから待って」「わかってる」と息子が言い始めてからあっという間に3時間が経ち、それから勉強を始めることもしょっちゅうでした。

毎日こんな状態では、中学受験どころではありません。息子の場合は、精神年齢が低いことからくる”甘え”もあり、自分を強く律することができていませんでした。

息子を「勉強モード」にさせるための工夫

息子を「勉強モード」にさせるために、わが家では6つの「ちょっとした工夫」を試しました。

[1]付箋はがし法

息子が勉強をする気にならない理由のひとつが、「先が見えない不安」があることでした。

先が見えないと、「永遠と勉強をやらされる」と思ってしまい、逃げたくなってしまうそうです。

【息子が感じていた不安】
・どれくらいの量をやらないといけないの?
・いつになったら終わるの?
・何をすればいいの?

わたしがあれもこれもやらせ過ぎたことが、息子を混乱させ、不安を感じさせてしまった原因かもしれません。

また、計算問題や一行問題、漢字練習といった「毎日取り組む勉強」はすることがわかりやすいんですが、それ以外にも勉強はたくさんあります。「やるべき勉強」を息子にいかに理解させるかが課題でした。

そこで、わが家では「付箋はがし法」を実践します。付箋に「やるべきこと」を書いて貼り、勉強が終わったら付箋をはがすという勉強法です。

結果として「やるべきこと」が見えるようになったことが功を奏し、息子の勉強へのモチベーションがアップしました。

[2]遊び感覚で問題を解く

遊び感覚で問題を解く方法を試したこともあります。ご褒美を取り入れる勉強も効果的でした。

【わが家で行った遊び感覚の勉強法】
・順番通りに問題を解かず、ルーレットやサイコロを使って出た番号を解く
・風船でバレーボールをしながら暗記したものを親子で言い合う
・問題を解いたらお菓子を1つ食べる

息子は楽しんでいましたが、正直なところ親としては大変でした。しかし、息子の気分が乗ってくると1人で問題を解き始めることが増えてきました。

やはり、息子にとっては「勉強を始める」というハードルが高かったんですね。そのハードルを、遊び感覚の勉強をしたことで下げることができました。

[3]勉強科目を20分で変える

息子は、頭ではわかっているけれど行動に移せない「凸凹タイプ」です。「勉強を始めると長時間勉強しないといけない」と考えてしまうことで、「勉強したくない」という気持ちになってしまうようでした。

そこで、「1科目20分間だけ」勉強をすることにしました。20分経ったら、その科目の勉強をストップして次の科目の勉強に移ります。そして、次の科目も同じく20分でやめます。

時間制限をつけて問題を解き始めると、息子は集中して勉強していました。「20分を何回もやったら、結局は勉強時間が増えるけど……」という息子からのツッコミをかわしつつ、「短時間集中作戦」で少しずつ勉強時間を増やしていきました。

[4]ちがう環境で勉強する

息子は、「家の雰囲気に飽きたからやる気が起きない」と言うことがありました。「塾の自習室を使ってきたら?」と思いましたが、そんな自主的な息子ではなく……

そこで、ちがう環境で勉強をしたこともあります。混んでいない時間をねらって飲食店やフードコートに行き、ごはんを食べながら勉強しました。

息子はいい気分転換になっていたようで、想像以上に勉強がはかどりました。

[5]勉強の前に息子がやりたいことをやる

息子は、こころが満たされているとやる気がでる傾向がありました。つまり、我慢ができず、ご褒美を先にもらいたいタイプなんですね。

勉強のやる気がどうしても出ないときは、息子がそのときやりたいことを先にやらせました。たとえば、ボルダリングで体を動かしたり、夏にはカマキリやバッタを捕まえに行ったり……。ちなみに、ゲームは気持ちの切り替えができなくなるため、勉強のモチベーションアップのためにはやらせませんでした。

リフレッシュだけして勉強せずにグダグダ……なんてこともありましたが、「遊んだら、そのあとに勉強するって約束した」と自覚していたのか、息子なりになんとか机に向かおうと葛藤する様子がみえました。

[6]テキストをコピーしてプリントにする

塾のテキストはとても厚みがあり、「テキストのここだけ勉強しようね」とわたしが言っても、息子にとっては膨大な量に見えてしまうようでした。

そこでやるべき量がわかりやすいように、テキストをコピーして、プリントのようにしました。プリントであれば、「これだけやれば勉強は終わりだよね。だったら早くやってしまおう」と、勉強に取り組みやすかったようです。

「子供はいつか成長する」と信じ、そのときの最善を尽くす

息子とこんなに二人三脚で中学受験をするとは、わたしは想像していませんでした。現在、娘が中学受験の勉強をしていますが、わたしは付きっきりではありません。

息子の勉強に苦労していた当時は、「こんなやり方をしていたら、ずっと自分で動けない子になってしまうかも……。親が介入し過ぎているかな……」という不安がありました。

しかし、中学受験はとにかく時間がないんですね。当時は、勉強方法のやり方を息子自身に考えさえるといった「理想」を言っていられる状況ではありませんでした。

中学生になった息子から「自立」が見えるように

そんなバタバタの中学受験を経た息子ですが、中学生になると大きく成長したことを親として実感しています。

いまでも発達障害の特性が垣間見え、相変わらず気持ちの切り替えができずに苦戦していますが、それでも自分から勉強するようになり、失敗を重ねながらも自分なりに考えて行動しているのがわかるようになりました。

現在は、中学受験のときのようにわたしが息子とゲーム感覚で勉強するなんてことはありません。息子がやる気がないときは、「お風呂へ入って気分転換したら?」「ちょっとお茶しない?」とわたしが声をかける程度です。

自分がやりたいことを楽しみに、なんとか息子自身で気持ちを切り替える努力をするようになりました。

「ちょっとした工夫」で子供は変わる

「子供は成長していく」という当たり前のことを、息子の中学受験を経験して深く理解しました。6年生のときに親子で葛藤した時期は大変でしたが、中学生になった息子は心身ともに見違えるように大きくなっています。

息子が勉強で悪戦苦闘しているときは、「この状態がずっと続くのかな……」と不安で仕方ありませんでした。でも、子供は少しずつ成長していくんですね。

わたしが試した勉強方法は、親が付きっきりになってしまい、時間も取られてしまいます。小さい子供がいたり、親が仕事をしていたりすると、受験生1人につきっきりというわけにはいきません。

しかし、どうしても子供のやる気がでず、苦しんでいる状況であれば、親の負担が多少増えることは覚悟のうえで「勉強を始めるきっかけ」をつくってあげることが大切だと思います。

わが家でも、「勉強をやりなさい!」とわたしが息子に口うるさく言い続けるより、「ちょっとした工夫」をするだけで息子の勉強に対するモチベーションはアップしました。

「中学受験のためにここまでするの?」「うちの子はこのままで大丈夫かな?」と、毎日のように考えていた時期もあります。でも、いま振り返ると親子で笑い合える思い出もたくさんあり、あれが「わが家の受験スタイル」だったんだな、と懐かしく感じています。

※記事の内容は個人の経験談です


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※記事の内容は執筆時点のものです

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