連載 発達障害&グレーゾーンの中学受験

#11 「子供の意識が変わったな」と思ったタイミングはありますか? ―― 親子で乗り越えた、発達障害&グレーゾーンの中学受験

2019年9月10日 市川 いずみ

発達障害&グレーゾーンの息子と中学受験に挑戦し、志望校合格を果たした市川家の中学受験録。どのように中学受験を乗り越えたのか、親子奮闘の軌跡をQ&A形式で聞きます。

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Question #11

「子供の意識が変わったな」と思ったタイミングはありますか?

Answer #11

はじめて受けた入試で「不合格」だったときです。この経験で、やっと息子にスイッチが入りました

5年生の終わりから、息子は気持ちの切り替えができずに、学校や塾に行かない日がありました。6年の夏期講習が終わって秋になっても、受験勉強に真剣に取り組める状況ではありません。過去問に取り組むことで、少しは息子にも危機感が生まれるかなという期待もありましたが、状況は何も変わらないまま。息子のスイッチがなかなか入らず、もどかしい気持ちでいっぱいのなか、あっという間に秋が過ぎ、入試が近づいてきました。

夏期講習とその後の様子

6年生の夏期講習は、受験生がとくに気合いが入るときです。息子も、数日休んだり、遅刻をしたりしながらも、塾の夏期講習に通っていました。息子のなかで葛藤を繰り返しながらも、「また頑張るから」と、今までになく塾に通っていた時期です。9月からは、模試や過去問対策が始まります。このまま勢いに乗ってスイッチが入るといいな、という淡い期待がわたしにはありました。

期待とは裏腹に、息子は”今”しか見えていなかった

過去問をやれば少しは現実が見えてきて、「やらなきゃマズイ」と気づくかな、というわたしの思いとは裏腹に、好きな理科や算数ばかり勉強したがる息子……。模試や日曜日の特訓授業もあり、忙しい日々に追われて親として焦る毎日のなか、息子は相変わらず、そのときの気分で動いていました。

「先を読むことが苦手」というのは、発達障害の特性のひとつですが、息子はまさに、”今”しか見えていない状態。そして追い打ちをかけるように、塾や学校に息子が行きたがらない日が、また出始めます。

夏が終わると、息子のやる気がまた出なくなってしまった

夏休みが終わり9月になると、塾のカリキュラムは最終段階になります。総復習と応用力の強化をしつつ、大きい模試を受けたり、過去問対策をしたり、小テストも増えました。一方で、小学校も始まり、目まぐるしい日々が待っていました。

親子の葛藤が、また始まった

9月中旬ごろまでは、息子なりに頑張っていたのですが、再びやる気が出なくなってしまいました。まわりの子は過去問に必死に取り組み、目標をもって頑張っています。しかし息子は、以下のような状態でした。

・塾に行かない
・小学校にも行きたがらない
・やる気がない
・勉強しない
・過去問をやらない

このような状況でも、受験はやめたがらず、「志望校を変える気もない」と言う息子。わたしは、困り果てていました。

これまで、発達障害専門の病院で相談をしたり、塾の先生と話をしたりしながら、「中学受験を続ける、やめる」を繰り返して、ここまできました。しかし、息子の行動が相変わらず伴いません。家で勉強もせず、時間ばかり過ぎていくと思ったら、夜になって「また頑張るね」と勉強し出すことも……。

息子が葛藤しているのは、近くで見ていてよくわかりました。とくに、「気持ちの切り替えができないこと」が、息子の行動に大きく影響しているように感じていました。

「受験をやめたくない」と、息子は言い続けた

当時のわたしは、「志望校に成績が届いていない」「やるべき勉強ができていない」「息子が自分の時間をほしがっている」といった理由から、偏差値を大きく下げた学校を受験して、ハラハラした受験はやめたいと思っていました。

しかし、今の状況、志望校について親子で話し合っても、息子の意志は変わりません。「志望校を変えたくない」と言い張りました。わたしとしては、息子の意志は尊重したいと思うものの、正直、息子の行動が伴っていないため、納得いきませんでした。

このままだと、親子でぶつかりあうばかりです。ちょうどこの時期、9月末から10月にかけて、志望校や入試スケジュールを具体的に決めるための塾との面談がありました。わたしは、この面談に息子も参加させて、塾の先生と話をしました。結局は、「受験したい学校がある」という息子の意志を尊重することに。こんな状態がいつまで続くかわかりませんでしたが、入試本番まで頑張ることになりました。

わたしの考え方が変わり、心が軽くなっていった

10月ごろの息子は、やる気が出たり、出なかったりを繰り返していました。スイッチが入る様子は、まったく見えません。息子の状態や行動が不安定のなか、なんとかこの時期まで来ましたが、不安なことはまだまだ山積みでした。

一方で、息子を交えて塾の先生に相談したり、夫婦で話し合ったりしたことで方向性が決まり、次第に心が軽くなっている自分もいました。ちなみに、遅刻や欠席の連絡を塾にするときに、塾の先生とお話をすることがありましたが、「親も根負けしないように頑張りましょう」と、電話口でいつも励まされていました。

そして、わたし自身の考え方が変わり始めます。「この子の伴走をするなら、もうなるようにしかならない!」と思い始めたんです。

「息子はわたしとは違う」ということに気づかされた

これまでは、「わたしが何とかしなきゃ」「このままでは、やるべきことから逃げる子になってしまう」「受験は甘くないし、行きたい学校があるなら合格のために頑張ってほしい」という気持ちがありました。そのため、息子をムリに動かそうとして、衝突ばかり繰り返していました。

わたしは、息子のことを両親にも相談していました。

「あんたは真面目だし、中学受験も経験しているし、大人だから先回りをして、いろいろと言ってしまうかもしれない。けれど、〇〇(息子)なりに、いろいろと考えているんでしょう。心を広くして受け止めてあげなきゃだめだよ。男の子なんて、やる気がでなきゃコツコツやらない子も多いし、失敗して気づく子もいる。塾へ行かなくても勉強をしなくても、受験をしたいと言っているならやらしてあげなよ。個性があって面白い子だよ。回り道したっていいじゃない」

「失敗しないように」と、わたし自身が生きてきたこともあり、わたしが失敗を一番恐れていたんですね。両親と話したことで、「息子はわたしとは違う」「受け止め方も接し方も変える必要がある」ということに気づきました。わたし自身が、まだまだ未熟だったな、と思います。

気がつくと入試まで100日を切っていた

相変わらず息子の接し方に苦労していましたが、気づくと10月下旬になっていました。息子が通っていた塾では、東京入試の100日前に、生徒たちに気合いを入れる会があります。しかし、わが家は千葉県の学校を考えていて、千葉入試となると、すでに本番100日前を切っていました。また、息子は相変わらず自分のペースで動き、塾にもその日の気分で行っていた時期だったので、100日前の会にも参加せず、ただただ時間が過ぎていきました。

息子のスイッチが入らないまま受験が終わりそうな心配と、ヤキモキした気持ちでいましたが、わたしにはどうすることもできません……。しかし息子にも、ついにスイッチが入るきっかけがありました。はじめて受験した入試の結果を知ったときです。

「不合格」を受けて、息子のなかで何かが変わり始めた

はじめての入試直前は、息子にもやる気が出て、勉強に打ち込んでいました。しかし、結果は「不合格」。そして、「入試はなんとかなるだろうと思っていたけど、どうにもならなかった。勉強しなきゃマズイね」という言葉が、息子の口からやっと出てきたんです。「しっかりやらなきゃ現実は甘くないって、あれほど言っていたでしょ!」と、わたしはあきれてしまいました。

「不合格」をもらってから第1志望の学校の受験までは、わずかな時間しかありません。しかし、ようやく息子に「やる気スイッチ」が入り、キライな国語や社会にも取り組み始めました。本当に、第1志望の入試直前のことです。急にテキパキ動いて勉強するようになったわけではなく、休憩時間は長いですし、お風呂もゆっくり入っていましたが、今までの息子とは明らかに何かが変わりました。

「自分で失敗して気づくこと」が、一番の特効薬だった

塾の先生からは、「いつかスイッチが入るときが来ますよ」と言われていましたが、わが家は本当に遅いほうだったと思います。これまで、わたしは息子にいろんなことをアドバイスしてきましたが、わたしの声は、息子の心に直接は響いていなかったようです。息子が変わる一番のきっかけは、「自分で失敗して気づくこと」だったんですね。

親としては、「勘弁してよ……」という気持ちも正直ありました。でも、この経験から、息子の特性をさらに知ることができました。息子が変わるきっかけにもなり、私にとっても大きな気づきを得た意味で、はやい時期に入試を受けたのは正解だったと思います。

「なんとかなる」と思っていても、なんともならないことがあること――。このことにやっと気づいた息子は、第1志望校の入試に向かって、ひと回り大きく成長したように感じられました。

※記事の内容は個人の経験談です


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※記事の内容は執筆時点のものです

この記事の著者

息子と娘2人の母です。凸凹の特性がある息子の中学受験が終了し、中高一貫校へ進学。現在は娘が中学受験に取り組んでいます。家庭学習、小中学校の生活、子育てについて日々の情報を発信しています。

中学受験体験・子育て情報ブログ「市川さんのおうちスタイル」
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